病院で

レーシック難民の眼鏡講座

13.実際に難民になったとき、病院で何が起こるか

さて、このレポートも終わりに近づいてきました。最後に、レーシック難民になった時に一体何が起こるか書いておこうと思います。

日本の大半の眼科医は、両眼視という言葉への関心は希薄です。眼科専門書を引用します。

「感覚器障害の克服と支援を目指す10年間」と題して、平成17年に日本学術会議感覚
器医学研究連絡委員会で審議された公表内容によれば、「両眼視」は神経眼科の分野で取り上げられているものの、両眼視障害の日常視における影響については、周囲社会の理解が極めて乏しいのが現状であると述べられている。そのひとつの理由は「両眼視」が高度に発達した視機能であることは認識されていても、中枢神経系がかかわる問題のために、われわれ眼科医の理解を超えてしまって興味の対象ではなくなり、したがって、「両眼視」に対する知識は他の眼疾患分野のそれと比べると、はなはだ頼りないものになっており、このことが「両眼視にかかわる問題」を眼科サイドから一般社会へ還元する情報量の少なさの原因になっているのではなかろうか。(『すぐに役立つ眼科診療の知識 両眼視』2007年1月31日、大月洋編集、金原出版株式会社、序文)

 そんな両眼視に対する理解度が低い眼科で、自分が斜位であることを自覚していない患者が両眼視検査も眼位の検査もされずレーシック手術をされ、難民になったとしましょう(問題が顕在化するXデーは人により異なりますが、筆者のXデーは1年後でした)。

目が痛くて会社を辞めるかどうかの瀬戸際になってしまった患者は、「生涯保障」を詠っていた施術クリニックを尋ねますが、眼圧の検査、自覚的屈折検査、眼底検査、シルマーテスト(ドライアイを調べるため涙の量を測る検査です)、角膜形状を調べるトポグラフィー撮影(薄くなった角膜が拡張していないか調べてもらうのは重要)をされるくらいで、その時点で問題がなければ「軽いドライアイでしょう」「眼精疲労でしょう」と言われ診察終了となります。

レーシックの後遺症には様々なものがあり、例えば円錐角膜(後述)や角膜上皮細胞侵入のように眼球に器質的に明らかに異常があれば対応してくれる場合が多いようです。しかし筆者のように眼球には器質的な異常は無いが、両眼視機能に問題がある場合(例えば筆者のように斜位が問題として顕在化した場合)は全く問題とされないのです。

私の経験では、レーシックをする眼科医と言うのは、「眼球の状態が良好であればそれでよく、2つ合わせて物を見る時のことは考えていない方がほとんど」です。恐ろしいのは、そのことすら自覚しておらず「目の表面に何の異常も無いのだから手術もうまく行っているだろう」と本気で信じているように見えることです。

このことを裏付るのがレーシックを実施する医者に向けた専門書の内容で、何冊か拝見したところ(「LASIKの実際(2000年、診断と治療社)」、「LASIK(2000年、メディカルトリビューン)」、「The LASIK最新屈折矯正手術の実際」2009年4月1日 特定非営利活動法人日本屈折矯正医学研究センター、株式会社アクトリクス編集・製作「実技角膜屈折手術 RK,PRK,LASIKを中心に」1997年5月15日、奥山公道著、南山堂他)、レーシックで必要な検査項目に「眼位異常」が入っている本はありませんでした。また、レーシック関係の論文の中でもレーシックの検査項目に「両眼視検査」「眼位異常検査」が入っているものを見かけたことはありません。

当然一般向けのレーシックの本で斜位の顕在化問題について言及した本にお目にかかったことはありません(「イントラレーシックで近視が治る」2006年1月30日ビーファイル発行、ブックマン社発売、品川近視クリニック院長青山勝著、「最新近視レーザー手術」2006年1月31日、ウィズダムブック社、錦糸眼科院長矢徹著)。

日本眼科学会が出しているレーシックのガイドラインにも眼位検査、両眼視検査についての項目は全く有りません。

※以下参照 http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/laser_new.pdf

 上記状況から、レーシックを実施している医者は両眼視という言葉についてあまり深い知識を持っていないか、関心が非常に希薄なのではないかと思います。そしてそういう医者が実施しているのがレーシック手術の大半なのです。筆者もこのことを知っていれば絶対に手術を受けなかったでしょう。

セカンドオピニオンを求めてさまよう眼科でも、同様のことが起こります。両眼視に対する意識が低い日本の大半の眼科では、患者が自分がレーシック難民であることを施術院と同様に眼圧の検査、自覚的屈折検査、眼底検査、シルマーテスト、機械があれば角膜形状を調べるトポグラフィー撮影(薄くなった角膜が拡張していないか調べてもらうのは重要)をされるくらいで、その時点で問題がなければ全く相手にされません。大きい病院であろうとそうです。

その上、レーシック手術を行ってから1年は、診療には保険が利かず、自費診療となるのです。  これもまたレーシック難民を苦しめる要因の一つです。

投稿日:2020年9月23日 更新日:

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現在、とても人気の手術となっている眼のレーシック手術に対する警告の内容です。
今回、レーシック手術を当初認可した国の担当官が、現在ではその手術の危険について語り始めています。レーシックの何が危険なのでしょうか?その内容について、当局ABCニュースのエリザベス・レイミーがインタビューを行いました。

「レーシック手術の落とし穴 “2.0なのに
見えない・・・”体験者が語る“過剰矯正”
の恐怖 」

このテレビ番組は、このサイトにも紹介していますレーシック難民オフ会のメンバー9人のかたがたも東京でテレビ局からの取材に協力されて、フジテレビにより製作放映されたもので、医療ジャーナリストの伊藤隼也氏が監修されました。

ちなみにメンバー9人が手術を受けたクリニックは品川近視クリニック5名、神戸クリニック1名、錦糸眼科1名、他眼科2名です。

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