レーシック難民の眼鏡講座
12.「遠視」×「斜位」で貴方もレーシック難民
遠視になるだけでもPCを仕事で使用する人には辛い状態なのに、その人が斜位の症状を持っていると、目にかかる負担は更にきついものになります。なぜなら遠視由来の毛様体筋の疲労に加え、両眼視のために外眼筋の疲労が加算されるからです。
筆者は現在+2.25の遠視用メガネをかけています。眼精疲労がかなりきついのですが、さらに外斜位+上斜位を潜在的に持っていたためにPC作業の際に毛様体の調節と外眼筋による輻輳が必要となり、限界を超えて負荷がかかる状態になりました。
1年は仕事も普通に行っていたのですが、100時間を越える残業が数ヶ月続いた後に、右目の目頭の上辺りに激痛が走るようになり、仕事を退職せざるを得なくなりました。PCを見る時間を減らすと痛みは1週間くらいで治るのですが、1日4時間程度普通の姿勢でエクセルの作業をすると再発するので、今は自営業者です。
私はまだマシな方で、レーシックが原因でもとからあった斜位が手術を必要とするほど悪化することもあるようです。
2011年に発表された論文を概要のみ引用します。
「角膜屈折矯正手術後に眼位が増悪し斜視手術を施行した2例」
要約 目的:角膜屈折矯正手術後に斜視が増悪した2症例の報告。症例:症例はそれぞれ21歳女性と43歳男性で,1例は1年前にLASIK,他の1例は16年前に不同視に対し,一眼に屈折矯正角膜切除術(PRK)を受けた。1例では手術後に両眼が遠視化し,術前からあった間欠性内斜視が恒常化して斜視手術を必要とした。他の1例には近視性不同視と間欠性外斜視があった。眼精疲労を伴う斜位近視と診断し,斜視手術を行った。結論:角膜屈折矯正手術では術後に眼位または両眼視機能が増悪することがあり,術前に眼位と両眼視機能を評価し、複視を含む病歴聴取が必要である。『特集 第64回日本臨床眼科学会講演集(4)』 伊丹優子 、田中明子 、山下牧子 、望月學 2011年
http://tinyurl.com/82mlsdx
※この論文は全文が国立国会図書館で取り寄せが可能です。興味のある方は是非呼んでみてください。
また、毛様体筋や外眼筋とは自律神経も関係が深く、2つの部位の疲労は自律神経に影響してきます。このため手術直後に吐いたり、めまいがとまらなくなったり、いわゆる自律神経失調症の症状を患う方もいます。
しかしレーシックを実施しているクリニックの多くは、あらゆる意味で「眼科医(「単眼球医」と呼ぶのが適切なのではないかと私は思っています)」であり、眼精疲労と自律神経の関係性について完全に関係ないという態度を示しています。そのためレーシック後に目に異常をきたしても親身になって診察を継続してもらえることはありません。
※ちなみに、白内障の手術も目の水晶体という部分を砕いて取り出し、眼内レンズに入れ替える手術なのですが、この手術でも手術後からそれまで無症状だった斜位が問題として顕在化する事例があるようです(「眼科ケア2009年夏季増刊 眼科スタッフのための眼鏡で困ったときに開く本」2009年6月25日発行、根木昭、加賀友紀編、株式会社メディカ出版、P.179、「すぐに役立つ眼科診療の知識 両眼視」P.118 、、「眼科プラクティス29 これでいいのだ斜視診療(2009年 9月22日発行、丸山敏夫編集、文光堂、P.182 白内障 )他)。
一方、レーシックの専門書には手術前のチェック項目として眼位異常をあげているものはありません。また、日本眼科学会のエキシマレーザー矯正手術のガイドラインにもレーシックの不適応とすべき患者の項目に眼位異常の記載は全くありません。