レーシック難民の眼鏡講座
10.レーシック後、PC作業で貴方の目にかかる負担は手術前より大きくなる
レーシックの宣伝には頻繁に「レーシックを受けて目が良くなった!」「0.01が1.5に!」などのフレーズが踊っていますが、これは具体的に言うとどういうことなのでしょうか?
「レーシックで悪かった眼が良くなった」というのは、具体的に言うと「角膜をレーザーで蒸散させることによって、調節を休ませたとき平行光線が網膜より前で像を結んでいた近視眼を、網膜ジャストの位置で像が結ばれる状態になるように焦点距離を変化させた」ということです(遠視矯正も技術的に発達してきてはいるが、2012年の段階においてはまだ近視矯正が手術のメインとなっています)。
ただ、この場合注意していただきたいのは、「近視眼を正視眼(過矯正なら遠視眼)にすることで、それまでとは眼の使い方が全く変わってくる」ということです。
人間の目はボーっとしている一番楽な状態の時、調節力を使っていないときは遠くを見ており、逆に近くを見る時は毛様体筋を使って水晶体を分厚くし、ピントを合わせています。遠くを見るときより、近くを見るときのほうが負荷がかかるようにできているのです。それゆえ最初から近くにピントがあっている近視眼は、遠くが見えない不便さが有る一方で、調節が原因の眼精疲労からは開放された、近見作業(パソコンや読書など)に適した疲れにくい目なのです。
以下、近視についての専門書からの引用です。
a. 近視と社会生活
近視は屈折異常の代表のように考えられ、悪い眼のように思われがちであるが、必ずしもそうではない。普通の近視では遠いところを見るときに不便があるだけで、近いところを見るときには不便が無く、適当な眼鏡を装用してさえいれば、社会生活を営む上に支障はない。むしろ、一般事務や精密作業など近いところを見ることの多い現代社会では、近視の人は眼精疲労を起こすことが少ない。(『屈折異常と眼鏡』1976年、丸尾敏夫、湖崎克、西信元嗣、医学書院、P.65)
これに対し、遠視は近くを見るときも遠くを見るときも毛様体筋の調節を必要とするので、近視眼より確実に眼精疲労が起こりやすくなります。
b.遠視と社会生活
遠視は近いところを見るときはもちろん、遠いところを見るときも常に調節を必要とし、そのため視力障害や眼精疲労を起こし、内斜視の原因となり小児では視力の発達が停止して弱視になったりする。
このように遠視は社会生活上問題が大きい。特に近いところを見ることの多い近代文明社会では、遠視の人はかなりのハンディキャップを背負っていることになる。とかく就職に当たっては裸眼遠方視力を基準にすることが多いが、これが良好なものの中には遠視もかなり含まれているはずである。そのため、採用後、一般事務や精密検査では眼精疲労を訴え、仕事の能率が悪くなる。
学校でも遠視は問題となり、小児は眼精疲労が、根気がない、飽きっぽい、本を読みたがらないといった症状で現れ、学習能率は下がる。(『屈折異常と眼鏡』1976年、丸尾敏夫、湖崎克、西信元嗣、医学書院、P.66)
だから私は特に仕事でパソコンを多く使用する方にはレーシックは絶対に勧めません。実際に遠視になった場合に何が起こるか知っているからです。私も眼精疲労のせいで仕事を2つ失っていますし、周りのレーシック難民で、パソコンの作業が耐えられなくなって会社をやめざる得なくなった人も大勢います(レーシック難民で会社辞めてないの方が少ないのでは?)。