本会代表 岡本 隆博
人間の眼には、両眼視機能が備わっている。
すなわち、通常は左右の眼で
1)ものを同時に見ることができる。(同時視)
2)ものを融合して見ることができる。(融像)
3)ものを立体的に見ることができる。(立体視)
という働きを持っているわけである。
これらのうちでは、立体視機能が最も高次の両眼視機能であり、正常な立体視機能を得るには正常な融像が必須であり、そのためには、同時視ができなければならない。
片眼に「抑制」がある状態では同時視はないし、複視がおきている状態では「融像」はないわけであるから、そういう場合には、当然ながら正常な立体視は無理である。
それに関する検査は、スクリーニング的な簡単なものから細かい数値まで求める詳しい検査までいろいろあるのだが、
しかし、我が国の一般の眼科では、実際にはこういう両眼視機能の検査はあまりなされておらず、この検査を正確に行なうということは非常に少ない。(大学病院など一部の眼科は別)
眼科においては、両方の眼をそれぞれ独立して把握するだけ、という検査方法がほとんどである。
(それについては、このサイトの記事を参照されたし)
ひどい場合には、患者さんが複視(ものが二つ見える)を訴えているにもかかわらず、それに対する詳しい検査も対処もしないという眼科もある。
専門の眼科医がいる病院の眼科や眼科医院でもそういう状況であるから、眼科の専門医がいないようなレーシックのクリニックではなおさらそうである。
以下に紹介するのは、このサイトの読者のかたにご紹介いただいた論文である。
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第64回日本臨床眼科学会講演集 65(6):915-918、2011
『角膜屈折矯正手術後に眼位が増悪し斜視手術を施行した2例』
伊丹優子 田中明子 山下牧子 望月学
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野)
要約
目的 : 角膜矯正手術後に斜視が増悪した2症例の報告。
症例 : 症例はそれぞれ21歳女性と43歳男性で、1例は1年前にLASIK,他の1例は16年前に不同視に対し、一眼に屈折矯正角膜切除術(PRK)を受けた。
1例では手術後に両眼が遠視化し、術前からあった間歇性内斜視が恒常化して斜視手術を必要とした。
他の一例には近視正不同視と間歇性外斜視があった。眼精疲労を伴う斜位近視と診断し、斜視手術を行なった。
結論 : 角膜屈折矯正手術では手術後に眼位または両眼視機能が増悪することがあり、術前に眼位と両眼視機能を評価し、複視を含む病歴聴取が必要である。
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この論文の詳しい内容は、国会図書館などで閲覧することができます。
(了)