坪田医師と清澤医師の対談

▶レーシックは安全か

週刊アエラ(2014年2月17日号)

 
坪田医師と清澤医師の対談

岡本 隆博

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朝日新聞出版の週刊『アエラ』(2014.2.17)に、レーシックの安全性についての、二人の医師の対談「レーシックは安全か」が掲載されている。
対談者は、慶大医学部眼科の坪田一男教授と、清澤眼科院長の清澤源弘医師。
前者は「推進派」で、後者は「慎重派」とのこと。

(以下、《 》内は、この記事からの原文のままの引用であり、★がついた文章(緑色の文字の部分)は、レーシック被害者の会http://lasikmutualjapan.jimdo.com/ のスタッフのかたの補足コメントである)

清澤医師の眼科医院は東京都江東区にあるが、そのHPを見てみると、

http://www.kiyosawa.or.jp/

これを見る限りにおいては、清澤眼科はレーシックをしていないようだが、レーシックについての記述は何もないようだ。
しかし、HPの中に「すべては患者様のために」としてある、この医師の姿勢からすれば、
自身のレーシックに対するスタンスを書いておいてほしいし、できれば、レーシック難民で
こういう人がいた、というような症例も載せてほしい。
それは、屈折異常という目の症状(これが疾患であるかどうかは微妙なところだが)を持つ
「患者様」(原因が単なる屈折異常であっても、視力不良と言う訴えを持つ人には健康保険が効く診療ができるのだから、やはり「患者様」なのだろう)のためになることなのだから。

 

安全性が証明されている?

《 坪田 手術はレーシックは1990年ごろに生まれておよそ24年目を迎えています。
世界で約2500万人が手術を受け、安全性と効果については証明されています。》

ここで言う「安全性」の意味が定かではないし、しかもそれがどのように証明されているのかも分らないし、「効果」についても、レーシック手術を受けた全員がみな満足できるような効果をもたらしているというわけでもないのである。

清澤 ただ、開業していると、レーシック手術後に目が乾いたとか痛いという人が現れます。年10人程度と少なくありません》

ここを読むと私なんかは、「年に10人なんて、そんなに少ないの?ホントかな?」と思うが、これはあくまでも、レーシックを受けて術後に具合が悪くてそのレーシック眼科ではラチがあかずに、江東区にある、レーシックをしていない清澤眼科まで流れてくる人がそのくらいだということにすぎず、たとえば、東京でレーシック手術を受けて、予後が思わしくなくて困っている人が、年間にたったの10人、ということではないので、その点をくれぐれも誤解にないように願いたい。

では、慶応大学病院の眼科へ来るレーシック難民は、年間にどれくらいいるのだろうか。

坪田先生にはぜひそのデータを明らかにしていただきたいものである。

私が思うに、その患者数は、清澤眼科へ来るレーシック難民とはケタが違うと思う。
なぜならば、大学病院なら高度な医療技術で自分のこの難しい眼を何とか治してもらえる
のでは、と思う人や、慶応大学ならレーシックの経験が豊富なのだから、慶応へ行って診て
もらおう、ということで慶応の眼科へ行くレーシック難民はかなり多いと、私は推察するからである。
それと、ここで清澤医師には、ご自身が体験されたレーシック難民の症例をもっと詳しく2、3人について語ってもらいたかった。
(あるいは、それを語ったが、編集の都合で割愛されたのか……)

 

レーシックは飛行機と同じ?

《 坪田 でも、コンタクトで失明する人もいる。今は少ないですが、慶応義塾大学病院でも結構な患者数がいた。》

なるほど。《今は少ない》ということは、今でもゼロではないということだろう。
へええ、慶応の眼科で、コンタクトで失明する人が、たまにいるのか……。

《 坪田  レーシックでは失明しないのに、危険と言われ、こうした発表(岡本註:レーシックを受けた4割以上の人に何らかの不具合があったとする消費者庁の調査結果の発表)まであるのはおかしい》

おかしいと思うのなら、坪田さん、消費者庁に直接抗議をなさったらどうなのでしょう。
それとも、抗議をしたが、聞き入れられなかったので、ネットなどで、ご不満を書いておられるということなのでしょうか?

★ レーシックで失明状態になった方は被害者の会で把握しているだけでも2人はいらっしゃいます。片方は眼科専門医ではない医者が執刀後にし角膜ヘルペス見落としで角膜がぼろ
ぼろになり失明状態。 この方には岡本先生も実際に会われたそうです。
もう一人は有名サッカー選手を手術し、執刀症例数は万を超えると宣伝しており、かつレーシック難民陰謀説をブログで公開している「眼科専門医」Y医師による執刀、ステロイド目薬の投薬ミスという薬剤師から見れば、「こんなミスする医者がいるんだね・・・」くらいのどうしようもないレベルのミスでの緑内障が原因の、片眼視野9割欠損の患者さんです。
この方は現在は白杖を使って生活されているようです。
眼科医は宣伝で「レーシックでは失明しない」と言いたがりますが、既に2人とも消費者庁にもレポートを提出済みですので、ここは是非取り消していただきたいですね。
アメリカでもFDAのリスク警告ページには「失明する患者もいます」と明確に書かれているわけですから。

《 坪田 僕はレーシックを飛行機にたとえています。東京から大阪に行く手段は、車、新幹線もあれば飛行機だってある。まず車と新幹線を使えとのご意見だと思いますが、時代は進化しています。輸送距離あたりで見ると飛行機の安全性が高いように、レーシックも総合的に一番安全。第一選択としてレーシックを希望する人がいても妥当と考えます。》

このたとえはどうだろうか。
新幹線は乗客の死亡事故ゼロで飛行機はそうではないから、新幹線がメガネで飛行機がレー
シックだ、ということなのかもしれないが、飛行機に乗って事故にあってえらいことになる人が、たとえば、わが国で何十年に何人くらいいるのか、それはほとんどの国民は知っている。
しかし、レーシックを受けて、術後にえらいことになる人が年間にどれほどいるのか……、
それはまったく闇の中なのである。
だから、飛行機をレーシックにたとえるのには、私はどうも違和感を感じてしまう。

慶大病院眼科のネットサイトの近視手術のページ
http://www.keio-eye.net/lasik/cost.html(2014.2.16現在)を見ると、術後の検査はけっこう頻繁にやられているようなので、ぜひとも、そのデータをすべて明らかにしていただきたいものである。
(もちろん、患者さんの氏名など個人情報にかかわる点は伏せる)

たとえば、術後のそれぞれの時点で、個々の患者さんがどう感じているのかということの、
割合を私はぜひ知りたい。

A= まったく不満はない。
B =少し不満はあるが、満足感のほうが勝る。
C =不満と満足感が、同じくらい。
D =裸眼視力が上がったという満足感よりも、不満の方が強い。
E =まったくひどい状態で強く後悔している。

そして、坪田氏が言う《レーシックも総合的には一番安全》という断言も、その根拠が不明である。
ここでいう《安全》の意味も不明瞭だが、その矯正手段のせいで目に重篤な被害をもたらすことがない、ということを「安全」と言っているのだと解釈すれば、レーシックは、コンタクトはともかく、メガネよりも安全性は低いだろう。
なぜなら、メガネなら、具合が悪いなと思えば、そのメガネをはずせばよいのだが、レーシックはそんな「自分自身による超簡単な不具合の原因除去」はまったく無理だからである。

★ 坪田先生は飛行機がお好きなようなので、私たちも飛行機比較させていただきましょう。
飛行機事故はそれが一度起これば事故原因が綿密に調査され、それが飛行機の安全性と
つながってきました。
それに比べレーシックは失敗してもその原因を医者が解明しようとせずに被害者に対しては
「あなたの精神のせいです」、対外的には「失敗は少ないので大丈夫」と言うのが普通の状態となっています。追跡調査もしていないので手術者数も全く分かりません。
さらに、アメリカと比べると日本の研究論文の少なさは、特に後遺症の研究論文の少なさは驚くべきものです。下記表をご覧ください。

アメリカと日本の国立国会図書館論文検索で比較した表

検索クエリ

(1)refractive surgery(屈折矯正手術)
(2)Refractive surgery complications(屈折矯正手術 合併症)
(3)refractive surgery binocular vision(屈折矯正手術 両眼視)
(4)refractive surgery diplopia(屈折矯正手術 複視 )
(5)Refractive surgery strabismus(屈折矯正手術 斜視)

PubMedでの検索結果
(1)47450 (2)17876 (3)521 (4)265 (5)631
NDL-OPACでの検索結果
(1)145 (2)6 (3)0 (4)0 (5)1

PudMed=アメリカ国立医学図書館の医学論文サーチ
NDL-OPAC=日本の国立国会図書館サーチ

2012年7月9日検索

ちなみにこの文章を書く際に坪田先生がどんな論文を書かれているかについてもここで調べ
させていただきましたが、坪田先生はドライアイや角膜の細胞などについての研究は良くなさっておられるのですが、レーシック被害者に多い両眼視機能不全や眼位異常についての研究は皆無です。被害者の会で大手で失敗して坪田先生の再手術を受けても治らず、今はプリズムメガネで眼痛が緩和された患者さんがいますが、その方が坪田先生の治療を受けられたのち被害者の会まで流れてきた理由がこれでよくわかりました。

さて話を戻します。安全と言うのは、万が一失敗することがあっても修復可能だから、原因をきちんと究明するから安全と言えるのであって、数が少ないから安全と言えるのではありません。
その数にしても、軽いものまで含めれば、消費者庁の発表で不具合4割、FDAの調査では5割
を超えているのです。

消費者庁でレーシックの被害発表が有った後、坪田先生達がされてきたことは何だったので
しょうか?
それは後遺症の研究でもなく、両眼視不全に関する論文の執筆でもなく、被害者の多いクリニックの公表でもありません。
レーシックは安全であるとただ叫ぶことです。
これでは比較される飛行機業界が気の毒ではないかと言うのが私の気持ちです。

 

白内障の手術とは違う

《 清澤  しかし、レーシック手術を受けた人の中には、ドライアイ、眼精疲労を訴える人もいるし、慢性的な刺激でうつになっている人もいる。私の眼科にもそういった患者さんが来られます。》
坪田  そういった症状は白内障など他の手術でも起こり得ます。肝心なのは術後のフォローです。そのような症状とレーシックの是非を一緒にされるのは違っていると思う。》

この坪田医師の発言もおかしい。
術後のフォローが肝心なのは、その通りだが、ではそのフォローをすれば術後に困ったことなる人を100人中の何人にまで減らせることができるのか、そこんところが言及されていないし、そのデータを蓄積しようという意思も坪田氏にも、他のレーシック医師にもないようである。
それと、白内障の手術とレーシックとでは、ぜんぜん性格が違うものである。

前者は、手術をしなければ矯正視力が低いままでどうにも困るから手術をするのだが、後者は、ほとんどの人が「メガネやコンタクトよりも、生活が楽」というだけで、医師の「大丈夫ですよ」という言葉を信じて、好き好んで危険な医療侵襲に飛び込むのである。

《 坪田 ……NASAも、レーシックをした人が宇宙へ行っても問題はないとしています。
問題にしているのは日本だけ。……》

NASAがなんと言おうと、日本だけでなく、アメリカでもレーシックが問題にされていることは、このサイトのほかの記事を見ていただければすぐにわかることであり、なぜここまで坪田氏はクロをシロと言いくるめるのか?私にはその理由がどうもよくわからないのである。

《 坪田 僕たちはレーシック手術を行なうかどうかの検討を本当に厳しく行います。
手術を希望されたかたの2割程度にはしません》

ふううん、角膜の厚さなどの生理的な適応性だけでなく、なぜあなたはレーシックをしたいのか、ということの生活相談的なことも「厳しく」おこなえば、逆に、「手術を希望されたかたの2割程度にしか手術をしません」となるのではないかと私は思うのだが、そういうことをしていては、ビジネスとしてのレーシックが成り立たないのであろう。

また、一時期レーシックを手がけていた阪大病院などの病院が、なぜいまレーシックをやめているのか、そんなに安全なものであれば、なにもやめることはないのに、と私は思う。

★ 「アフターケアと言う言葉で何でも済まさないでください」と言うのが当会の被害者全員の気持ちです。失明、眼精疲労による失職を理由に家庭崩壊された方もいます。この人たちをどう「アフターケア」するつもりなのでしょうか?
なにより消費者庁への被害レポートではこのように「アフターケアを保証!」「満足度99%」と宣伝する業者こそが、正に失敗後の治療をしてくれないことが明らかな結果となっていました。
その中には坪田先生が代表を務められる安心レーシックネットワークの患者さんもいらっしゃいましたよ。

 

患者本位ではやっていけない

《 清澤 ただ、どういった場合にレーシックをする、しないの基準は施設ごとに違うのではないでしょうか。厳しい基準にすれば、医師がクビになる場合もあるやに聞きます。》

利益追求第一でレーシックをやっている施設では基準が甘くなるのは当然で、そういうところで手術を受けた患者に難民が発生しやすいわけである。
その施設が利益追求型かどうかは、ネットサイトでの宣伝のしかたで、ある程度わかるのではないか。
というか、レーシックでメシを食っているクリニックでは、レーシック設備の減価償却をし、さらに利益を上げていくには、患者本位ではなく、クリニック本位で、手術をする人の選定をしていかざるを得ないのだから、とにかく、値引き宣伝だとか、紹介制度だとか、あらゆる手段を講じて手術を受けてくれる患者を集めていかないと、レーシックビジネスが維持できないのであろう。

《 坪田  ギリギリのところは医師の判断となるところがある。逆に、本当に安全な場合しかやらないケースも多々あると思う。》

この発言は、すなわち、本当に安全だと医師が判断しなくとも手術をしてしまう場合も多いということになるのであり、語るに落ちるとは、このことか……。
角膜の厚みなどの点で難ししそうな眼の人に、なんで、そんなリスクをおかしてまで、近視手術をしないといけないのだろうか?

《 坪田 高リスクな患者さんに手を出して悪評が立てば次の患者が来なくなることになりますから。》

へえ、そうですかねえ?では、悪評で有名な某クリニックが、いまでも患者がけっこう多いのは、どういう理由なのでしょうか?

坪田  (トラブルが)万一起きても、受けてよかったと思えるところまでケアすることが、現代の眼科医療だと思っています》

へええ、でも、レーシック術後の不具合をみなきちんと治療できる眼科医なんて、現代はもとより、未来においても、存在し得ないように私は思うのですが、そんな神様のような眼科医が実際にいまどこかにおられるのでしょうか、坪田先生。

 

レーシックは医療ではない?

《 清澤 レーシックは健康な目に手を加え、元に戻すことができない手術。》

ということは、屈折異常や老眼は不健康なものではない、すなわち、眼疾患ではない、という認識なのであろう、清澤医師は。
そうであれば、レーシックは、美容外科とほとんど同じ「擬似医療」であり、本当の「医療」ではないということになる。
すなわち、本来の医療というのは、疾病に対する診療を指すのであるが、医師法の解釈や判例では、医師が行わなければ危険となる行為を、反復継続の意思を持って行うこと、を「医行為」としており、「医行為」とはすなわち「医療」のことである。
ということは、元来はれっきとした医師であっても、少なくとも医学的必要性が無い患者に対するレーシック手術を手がけているときには、その人物は「擬似医師」なのである、と私は言いたい。

清澤 ……いろいろなお話を聞いても私は、いまだに単純な近視の患者さんや家族に積極的に(レーシックを)薦める気にはなれません。》

この発言でこの対談がしめくくられたということは、このアエラの編集部の良識の一端のあらわれだと思うが、さらに踏み込んで、レーシックによる悲惨な患者さんの実例を何人か掲載してほしかった。
清澤医師に依頼すれば、そういう人にアクセスを取るのはさほど難しいことではないように思うのだが……。

★ レーシックは確かに成功する可能性が高い手術です。しかし失敗した場合にはレーザーで蒸発させた角膜を元に戻す方法はなく、両眼視機能不全の様な角膜に特に異常の見当たらない合併症は発見されず、研究も進んでいません。そのため被害者の会にはプリズムメガネを常用している人が大変多いです。プリズム眼鏡で緩和できるのはまだましで、中には目が片側に寄ってしまうとか、おかしな動きをして眼鏡を作ることができない場合すらあるのです。目が明らかに片側に寄っているのに、視力が1.5出ていれば医者からは「こんなに見えるのにむしろ喜ぶべきでは?」と言われたりします。

この手術は絶対に安心と言えるレベルには日本の眼科業界はまだ達していないのです。
論文数の少なさからもそれが分かります。

この手術を考えている人は、リスクも含め良く検討してください。
ちなみに私は親兄弟が受けると言ったら「私を殺してからならどうぞ」と答えています。

(2014.2.17)

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投稿日:2020年8月26日 更新日:

執筆者:

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現在、とても人気の手術となっている眼のレーシック手術に対する警告の内容です。
今回、レーシック手術を当初認可した国の担当官が、現在ではその手術の危険について語り始めています。レーシックの何が危険なのでしょうか?その内容について、当局ABCニュースのエリザベス・レイミーがインタビューを行いました。

「レーシック手術の落とし穴 “2.0なのに
見えない・・・”体験者が語る“過剰矯正”
の恐怖 」

このテレビ番組は、このサイトにも紹介していますレーシック難民オフ会のメンバー9人のかたがたも東京でテレビ局からの取材に協力されて、フジテレビにより製作放映されたもので、医療ジャーナリストの伊藤隼也氏が監修されました。

ちなみにメンバー9人が手術を受けたクリニックは品川近視クリニック5名、神戸クリニック1名、錦糸眼科1名、他眼科2名です。

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