近視手術の後遺症対策研究会
代 表 岡本 隆博
強度近視の人がレーシックの適応検査を受けた場合には、レーシックでは角膜を削れる厚みの点で、正視状態にまではできない、という理由で、フェイキックIOLを勧められるケースが多いと思います。
フェイキックIOLについては、我が国ではまだ厚生労働省の認可がおりておらず、いま、治験をしている最中(2011.5月現在)のようです。
これについては、下記のような問題点も指摘されています。 http://www.optnet.org/syujyututaisaku/jyutusiki.html#anchor_s1
これによると、アメリカのデータでは、90%以上に人は満足で、3%の人は非常に困った状態になったということです。
これは言い換えれば、10%の人には不満が残ったままで、3%の人は強い後悔をしているのだ、ということになるでしょう。
そのような成功率しかない手術を、高いお金を出して受けようとする人は少ないと思われます。(治験でなければ、両眼で数十万円、http://www.lasikwaribiki.com/phakiciol.html)
では、強度近視で、何らかの理由でメガネでもコンタクトでもどうしても生活上で具合が悪くて困っている、という人は、どうすればよいのでしょうか。
ここからが私の私的な意見です。
当店のお客様で、63歳で強度近視のかたで、両眼に白内障手術(眼内レンズを挿入)をされて、その結果非常に具合良くて、両眼ともに1.5の視力が出て、こんなことならもっと早くに手術をすればよかったとおっしゃっていたかたがおられました。
そのかたの場合、近視の度数は左右共に-10D台で手術直前の最高矯正視力は、右が0.7、左が0.5でした。
2~3年前から矯正視力の低下が始まったのですが、ここまで辛抱してこられたのです。
それで、私は次のようなことを思いました。
・ フェイキックIOLを入れるくらいなら、白内障でなくとも、白内障用のIOLを入れたらよいのではないか。
・ その方があとで後遺症などが起こる率はずっと少ないはずだし、何と言ってもこれまでの手術実績数が、白内障用のIOLとフェイキックIOLとでは、ケタが何ケタも違うから、安心感が全く違う。
・ 高年齢者でない人でも、もともとの水晶体を取り除いて、人口水晶体(IOL)を入れたら、目の調節力がほとんどなくなる (ただし偽調節があるので、遠方しか明視できないということもない)という問題点は生じるが、それについては、下記のように考えればよい。
(1)どのみち、歳をとって老視が始まったら、レーシックやIOLで正視になっても、老視のせいで手元は明視できなくなる。
(2)白内障手術のIOLでは、狙う屈折度数に対して、かなり正確な結果が出てくる。
(3)裸眼でピントのあっているところを、眼前の有限の距離に合わせることもできる。
(4)また、たとえば、右眼を正視状態にし、左眼を-1D前後の近視にして、遠くの景色も、テレビも、パソコン作業も裸眼で明視できるという状態にすることも可能である。(ただし、そういう方法だと、立体視機能がわずかに低下するが、日常生活で特に困るというほどでもない。 左右差が1.0D程度の不同視なら、その状態で車の運転もできる)
(5)近見作業の多い人でなければ、日常生活においてほとんどメガネを必要としなくなる。
(6)スポーツを裸眼でしたいという人には、好適な手術である。
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なお、白内障でない人に対して、いまの水晶体を取り除いて、白内障用のIOLを入れるという手術に、健康保険が適用になるのかならないのかは、私は知りませんが、もし、適用にならなかったとしても、フェイキックIOLを自費で入れるよりも安いと思います。
それと、レーシック主体の眼科が、強度近視の人に対して白内障用IOLを勧めないのは、わたしが上に書いたような利点を知らないからではなく、費用の点で、一般の眼科と競合しなければならなくなるからではないかと、私は推察しています。