東京都・南青山クリニック 井出 武様への公開質問

公開質問 

東京都・南青山クリニック 井出 武様

2012.7.1 近視手術の後遺症対策研究会  岡本隆博

貴殿が在籍しておられる、南青山クリニックのネットサイトに、パソコン作業による眼精疲労についての記事があります。

http://www.minamiaoyama.or.jp/bluelight/ (2012.6.30現在)…(1)

これにおいて貴殿は、パソコン作業によって生じる眼精疲労の原因としてまずはじめに、眼の調節機能のことを挙げておられます。

貴殿が第一に調節のことを書かれたということは、調節の問題がもっとも影響力が大きいと貴殿も認識しておられるからこそでありましょう。
そのことに私は同意しますが、そうであるなら、適度なプラス度数の眼鏡(正視系か遠視系の場合)か、あるいは、適度に近視を低矯正した眼鏡を使用することにより、(いずれの場合も、必要に応じて乱視も矯正)眼精疲労(調節性眼精疲労)をかなり緩解できるわけですし、実際に我々はそういうメガネをPCユーザーにお作りして喜んでもらっています。

http://usukal.biz/pc/(2012.6.30現在)

PC作業における何時間にもわたる継続的な調節に対する対策として、貴殿がここに書いておられるような、ときどき目を休めるという方法だけで事足りるわけがないですし、調節の問題を解決する手段として最も手軽で確実な「眼鏡矯正」について何も述べられていないことに私は強く疑問を持つのですが、ここではなぜ眼鏡矯正による調節の補助について述べられないのでしょうか。(質問1)

そして、過剰な調節への対策の一つとして、貴殿は

(引用はじめ)
遠視は近くを見るのによりたくさんの調節力を必要とするため、若いうちから近くが見えづらくなったり、近くを見ることで目の疲れが出やすくなります。レーシックで改善できる場合がありますのでご相談ください。
(引用おわり)

としておられますが、正視の人でもPC作業を継続していると眼精疲労を起こす人も少なくないのですから、遠視を仮にレーシックで矯正したとしても裸眼でのPC作業でやはり疲れるということになる蓋然性は少なくないと言えるでしょう。

なのに、なぜわざわざ、副作用や後遺症の恐れのあるレーシックをするのがよいのか、
それが私には理解しにくいのですが、遠視がある眼であれば、貴殿のこのたびの22人に対する臨床試験の結果からしても、

度なしのPCレンズではなく、遠視を矯正する度付のPCレンズを使えばよいということになるのではないでしょうか。(質問2)

また、上記(1)のサイトに

(引用はじめ)
アンケートによる自覚症状については、「ピントが合わせにくい」「光がギラギラする」「文字がちかちかする」「線を目で追いづらい」といった症状が、青色光カットグラス装用群では低下の傾向が認められました。
(引用おわり)

としてありますが、「低下の傾向が認められた」ということは、統計的な有意差はなかったということであり、したがって、青色光カットグラスによる眼精疲労の緩解が科学的に立証されたということではないのですね。(質問3)

そして、「線が目で追いづらい」という訴えにおいては、それは上斜位などの眼位の異常が原因となっていることがままあるものですが、今回その検査はしておられないようで、そのことを私は不満に思います。
それはともかくとして、レーシックを希望する患者さんに貴殿は眼位などの両眼視機能検査をしておられるのでしょうか。(質問4)

それについては、下記の記事もご参照ください。

http://www.optnet.org/syujyututaisaku/shitumon-31.html(2012.6.30現在)

それから、
http://www.jins-jp.com/jins-pc/column/1.html(2012.6.30現在)

上記の(株)ジェイアイエヌ社のサイトに、貴殿が示されたとされる、いろんな照明における波長ごとの強さの割合を示すグラフが載っていますが、この強さの割合は各波長ごとにおける光のどういう単位の割合を示したものでしょうか。カンデラでしょうか。それともほかのものの割合を示したものなのでしょうか。(質問5)

それから、貴殿が書かれた下記のレポート(論文)についてお尋ねします。
http://www.minamiaoyama.or.jp/bluelight/pdf/report_minamiaoyama.pdf(2012.6.30現在)

この臨床試験の対象者の眼の器質的および機能的な検査については

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120601-00000057-zdn_mkt-ind(2012.6.30現在)……(2)

において、裸眼視力1.0以上の眼、とだけ書いてありますが、

22人という、さほど大勢の人数ではないのですから、裸眼視力だけの検査ですますのではなく、最低限度、屈折(異常)や調節状態の検査くらいはしておかないと、試験の結果を見る場合に、適正な判断はしにくいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。(質問6)

それと、この臨床試験では、PC作業による眼精疲労などの自覚症状のある人もない人も、試験の対象者になったのでしょうか。 それとも、自覚症状のない人は除外されたのでしょうか。(質問7)

そしてこの臨床試験の比較の方法として、

(引用はじめ)
一方は青色光をカットする眼鏡を装用、もう一方のグループはレンズの部分をはずした素通しの眼鏡を装用して
(引用おわり)

という方法を採られたようですが、これだとプラセボ効果の排除がまったくできません。

このレンズは、従来からPC作業に良いということで宣伝され使われていた、「UV400カットで薄茶色がついている」というだけのものではなく、「UV400カットに分光透過率の上で工夫のある薄茶色がついている」、というところに特徴があるはずです。

ですから当然、その種の従来レンズと、当該レンズとの比較がなされてこそ、このレンズの有効性が的確に判断できるわけだと思いますし、その方法であれば、二重盲験法も用いることができます。

また、無色でUVカットのレンズと、さらにそれに加えて青色光線カットもあるレンズとの比較も、外見上での違いが少ないので、やはり二重盲験法を実施することができるはずですし、その違いについては、我々も大いに関心を抱くところです。

しかし、今回貴殿は、そういう比較でもなく、プラセボ効果の生じる恐れが多分にある、「レンズなしの場合と、当該レンズで見た場合との比較」をされました。
なぜ、このような不合理ともいうべき方法を採られたのでしょうか。(質問8)

それからフリッカー値の低下具合の比較では、着用無しの場合には、42.65から38.95への低下ですので、0.86%の低下であり、着用ありの場合には、42.05から40.45への低下ですので、0.38%の低下となった、ということが示されましたが、標準偏差が示されていません。

この両者における低下率の差が有意であるかどうかを判断するには、標準偏差が示されるべきだと思いますが、なぜ標準偏差が示されていないのでしょうか。(質問9)

被験数がどちらも11人と、少ないこともありますが、仮にプラセボ効果がないと仮定したとしても、貴殿が把握しておられる標準偏差からして、この「0.86%」と0.38%」の差は有意であると言えるのでしょうか。(質問10)

仮に、それが統計的に有意であったとしても、それぞれの11人の中に、裸眼視力はほぼ正常であっても、屈折状態や調節力が正常な眼の人がどういう割合で含まれているかは不明だという状態で、フリッカーテストなどをしても、2つの群の眼の疲れの比較評価としてはかなり信ぴょう性が劣るのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(質問11)

そして、それを図示する棒グラフにおいては、ゼロ点をまったく除外して、一部のみを拡大し、着用ありと着用なしの両者の差を視覚的に実際以上に感じさせるグラフとなっています。
すなわち、一見すると、着用なしではフリッカー値が7 割ほど低下し、着用ありではそれが3割くらいの低下ですんでいるかのようにも誤解してしまいそうです。
ゆえに、このグラフはアンフェアーな表示だと言えるのではないでしょうか。
(質問12)

なお、ちゃんとした研究論文では、最後に「謝辞」として、研究資金などで援助をしてもらった公共の団体や企業の名前を挙げるものですが、この「報告書」には、それについては何も書かれていません。

この臨床試験については、当該レンズの発売元から、実物試料の他に、研究資金の提供はあったのでしょうか。(質問13)

もう一件お尋ねします。

(株)ジェイアイエヌのネットサイトに、
貴殿の主導のもとに実際されたのであろうと推察される、保護レンズの臨床試験について書かれています。

http://www.jins-jp.com/jins-pc/about/5.html(2012.6.30現在)

これによると、貴殿は、(株)ジェイアイエヌの発売する、青色光線カットのレンズの臨床試験を日本マイクロソフト社において実施されたそうですが、その方法について下記のサイトにおいては下記引用文のように説明してあります。

http://www.jins-jp.com/functional/monitor/11.html(2012.6.30現在)

(引用はじめ)
【日本マイクロソフトにおけるJINS PCの効果効能実験について】
JINSでは、日本マイクロソフト株式会社のご協力のもと、実際のオフィス環境下におけるJINS PCの効果効能に関する実証実験を実施しました。

実験は眼の疲労に関する14項目からなるアンケート調査を、JINS PC装用(1週間)、JINS PC非装用(1週間)の計2週間にわたって実施。約124名のマイクロソフトの社員の皆様にご回答いただきました。
アンケートは、南青山アイクリニック東京副院長 井手武先生監修により分析が進められ、結果、JINSPCの有効性に関し、統計的にも有意なデータが確認されております。
(引用おわり)

これについて私が感じました疑問を以下に述べます。

この臨床試験においては、(株)ジェイアイエヌからの試料の無償提供があったものと推察されますが、それ以外の研究資金の提供はあったのでしょうか。(質問14)

試験の対象者の眼の器質的および機能的な検査は事前に実施されたのでしょうか。
(質問15)

この試験方法だと、先に述べたのと同様の理由により、プラセボ効果の排除がまったくできません。
なぜ、このような不合理ともいうべき方法を採られたのでしょうか。(質問16)

この試験においては約124名の回答があったということですが、試験を実施したのは何名だったのでしょうか。(質問17)

無回答だった人は、なぜ回答をしなかったのでしょう。(質問18)

「統計的にも有意なデータが確認された」そうですが、そのデータを公表されないのでしょうか。されないのであれば、その理由をお尋ねします。(質問19)

最後に一つお尋ねします。

青色光を網膜に当てると、記憶力や学習力が高まるという説があるようです。
(下記のサイトをご参照ください)

http://www.su-gomori.com/2011/02/blue-light.html(2012.6.30現在)

であるならば、青色光カットのレンズは、そうでないレンズに比べると相対的に記憶力や学習力を弱めることになるという恐れもなきにしもあらず、と言えるのではないでしょうか。(質問20)

投稿日:2020年9月2日 更新日:

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「レーシック手術の落とし穴 “2.0なのに
見えない・・・”体験者が語る“過剰矯正”
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このテレビ番組は、このサイトにも紹介していますレーシック難民オフ会のメンバー9人のかたがたも東京でテレビ局からの取材に協力されて、フジテレビにより製作放映されたもので、医療ジャーナリストの伊藤隼也氏が監修されました。

ちなみにメンバー9人が手術を受けたクリニックは品川近視クリニック5名、神戸クリニック1名、錦糸眼科1名、他眼科2名です。

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