文藝春秋(2014年6月号)
まだ警告度合いが足りない!
岡本
月刊『文芸春秋』(2014.6月号)にレーシック関係の記事が載った。
「レーシック手術の語られざる副作用」
筆者は、筑波大学医学医療系眼科教授の大鹿哲郎氏である。
内容は、概略「レーシックにはリスクがあるから安易に受術しないほうがよい」というもの。
いまの時期にこれでは遅きに失した感じもするが、でも、これが載らないよりもましだと思う。
それで、この記事の本文から適宜部分引用をして評者の考えを述べてみる。
(以下における《 》内の分は、当該記事からの原文のままの引用であり、そのあとにある文は評者の意見である)
《普段見ることの多い「近く」を裸眼で見られる近視のほうが「いい目」であるはずなのです。》
この叙述は少し舌足らずである。
なぜなら老眼になっていなければ、正視であっても、近くを裸眼で見ることができるのだから。
だからここは「裸眼で見られる」ではなく、「裸眼で無理なく見られる」としてほしかった。
《近視は病気ではありません。》
この断定は、拙著書『眼科処方箋百年の呪縛を解く』
http://homepage1.nifty.com/EYETOPIA/books.html
で私が述べたことと同じであり、世界の眼科学の常識であるといえよう。
《その「正常な目」に手術をするのがレーシックなのです。 一度この手術をしたら元には戻せません。術後の視力が気に入らなくても、受け入れるしかないのです。》
これも舌足らずである。
上記の文のあとに下記を加えておいてほしかった。
「再手術でなんとかなる・・・・ということも無くはないのですが、再手術でもうまくいかないことも多いし、手術を繰り返せば角膜がどんどん薄くなってエクタジアなどの角膜疾患に陥りひどい場合には角膜移植をせざるをえなくなることもあるのです。」
《患者が希望するからといって、必要のない遠視にしてしまう眼科医が一部にいます。
その結果「過矯正」となり、それが原因でうつ症状や自律神経失調症などに悩まされる人が
生まれることになるのです。》
これではまだまだ警告度が足りないと私は思う。
ここは次のように書いてほしかった。
最高視力を出そうとして、レーシックで遠視眼にしてしまう医師がいますが、その結果「近視過矯正すなわち遠視」になって、そのせいで、あるいは、原因不明のことで、うつ症状や自立神経失調、吐き気、頭痛、悪心、倦怠感、などで連日悩まされたりして、中には自殺まで試みる人もいるくらいです。
そして、筆者はこの記事の終わりに、手術を受けるにあたっての注意点として、次の4点を挙げて説明する。
《めざす視力は控えめに》
《治療費が安すぎる施設は避ける》
《合併症の詳しい説明はあるか》
《40代以降はより慎重に》
しかし、これでは、レーシックを受けてあとで非常に強い後悔をすることになる人を減らす
ことには、あまり実効性はないように評者には思える。
こんなに生ぬるいことを書くよりも、もっと分かりやすく、次のように書けばよいと思う。
「レーシックを受けて、取り返しがつない事態に陥って廃人のようになる人、仕事ができなくなる人などが少なくない(そのパーセンテージは詳しいデータがないので不明)という事実をしっかりと認識して、それでも、裸眼で遠くのものをはっきりと見たいというのであれば、運試しのつもりでレーシックを受けてみられてもよいと私は思う。」
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