南青山に産地メーカーのアンテナショップが
岡本
日本貴金属時計新聞(2008.11.21)によると、福井のメーカー20社ほどが福井県や鯖江市の援助で、南青山にアンテナショップを設けたとのこと。
福井市のメガネ店のAさんは、THE291の店でメガネのフレームの販売もしているとおっしゃっていましたが、それは、この店のことですね。
ところが、日本貴金属時計新聞には「この店舗の営業形態については、情報発信のためのアンテナショップであり、小売業を展開するものではない(おそらく黒田氏の説明でしょう)」としてあります。
実際のところは、どうなんでしょう。
1)「希望者には枠やサングラスを販売」ということなのかもしれないし、
あるいは、
2)「そういう希望があっても、絶対に販売はしない」ということかもしれません。
しかし、私はどちらも感心できません。
まず、1)であればどうでしょうか。
この場合、産地の自治体の税金を使って一般店での売上げを減らしてその商売をじゃまする、ということもなくはないのですが、それは実際にはたいしたことではなく、金額もしれたものだと思います。
そんなことよりも、ある枠が個人に、物理的、光学的にきっちり合うかどうか、ということをしっかり見ることもなく、求められるままに安易な販売をして(枠だけの販売だと、どうしてもそうなりがち)各人に合わない枠や、あるいは、加工が難しい枠、フィッティングが困難な枠などを他店に回すという、ツミなことをする恐れが多分にあるわけで、それが私には他店には迷惑だと思うのです。
たとえば、地方から東京へ来た人がそのアンテナ店で買った枠を地元のメガネ店にレンズ入れに持っていたら「これはムズカシそうですので当店でお受けできません」と言われて、別の店へ行っても同じことだった、というようなことになったら、気の毒ですよね。
もちろん、そういうことは、このアンテナショップに限らず、都会のいわゆるセレクトショップなどではよくあることでしょうけれど、このアンテナショップには税金が投入されているという点が違うところであり、税金を使った商売であるのなら、もっとあとあとまで責任を持てる方法でお願いしたいものです。
また、2)であれば、単なる税金の無駄遣いだと思います。
(開業当初だけでなく、おそらく維持にも税金が使われるのでしょう)
ですので私はむしろ、1)でもなく2)でもなく、ちゃんとしたメガネの小売り技術者をその店に常駐させて、検眼も加工もフィッティングもこの店できちんと対応して、度付きメガネを受注してみるのがよいと言いたいのです。
はっきり言って、枠だけ売るというのは中途半端で無責任です。
レンズも入れて販売した上で、その担当者から、いろいろな情報を摂取すればよいのです。
そうしたら、各メーカーが作って売り出している枠の中に、見かけ倒しの枠がいかに多いか、すなわち、加工が難しい枠、フィッティングが難しい枠、ろくにフィッティングができない枠、いわゆる新素材の問題点、などというのがわかるし、使用開始後のユーザーは、どういうクレームを持ってくるのか、ということがよくわかるわけです。
◎
そのあとで来た眼鏡新聞(2008.11.28)には、このアンテナショップのことが
一面に大きく載っています。
それによると、展示の商品を販売するのかどうかは明確には書いてありませんが、「アイテック(株)と竹内光学工業のメタル枠、サン・オプチカル(株)のプラスチック枠についてはセミオーダーを受け付ける。常に多彩なカラーサンプルを用意しており、ユーザーの好みに応じたプラスチック生地で製作する。さらに毎月限定生産でフルオーダーメイドの注文にも対応する」のだそうです。
おそらく既製枠のみの販売もするのでしょう。オーダーメイドなら受けるが、出来上がっている物は販売しない、というやりかたは考えにくいですから。
眼鏡新聞によると、黒田会長は「このショールームはユーザーのナマの声を聞き、各メーカーが商品開発に活かしていくという重要な役割を担っている」と言っているが、それであれば、きちんとフィッティングもし、レンズの枠入れ加工もしてから販売しないと、本当にその枠が良い枠かどうかはわからないのだから、メガネとしては半製品でしかない「枠のみの販売」ではなく、レンズを入れて完結したメガネとしての商品の販売をしてほしいものです。
もし枠だけの販売を求められた場合には 「それはできません。このショップは、個々の枠についての、スタイルに対する人気だけではなく、フィッティング性や、度付きレンズの枠入れにおける技術的対応状況についても調べていますので」と言って断っていただきたいのです。
そして、ショップにいる技術者には、販売した個々の枠におけるフィッティング性や枠入れ加工のしやすさなどについての報告を、このショップの運営元責任者に対して義務づけ、その報告を受けた責任者は、その報告を各メーカーにわけて送るのがよいわけです。
そういう営業内容であるのなら、私はこのアンテナショップには、諸手をあげて賛同します。
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参考までに
黒田会長さん、枠をフィッティングもしないでレンズも入れないで販売するのは、ちゃんとしたメガネとして販売するよりも100倍くらい楽ですよ。
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産地で配布している「鯖江マップ」
岡本
Aさんから、鯖江商工会議所が発行した「めがねのまち鯖江マップ」という小冊子を送っていただきました。
産地(鯖江市、福井市、越前市など)のメーカーや問屋さんがたくさん載っていまして、地図も入っています。
それで、一部に「購入可能」というマークが入っています。
その「購入可能」の企業は、300社ほど載っているうちのごく一部で、8社ほどですが、私が想像するに、商工会議所としては、観光客なんかで鯖江を訪れた人に対するサービスとして、「工場で安く買える」というおもしろさを味わってもらうために、こういう設定をしたのであり、ここに名前が入っている企業は、好き好んでこの企画に乗ったのではなく、まあ、義理で「購入可能としておいてくれてもいいよ」くらいの感じで、引き受けたのだろうと思います。
でも、工場では、メガネの個別対応の販売には慣れていないでしょうから、こういうことはやめて、むしろ、福井市や鯖江市のメガネ小売り店を地図に入れて紹介してこのパンフを持って行けば特別割引、みたいな方がよいのではないかと思います。
それなら一応、枠だけ買うにしても、顔とその枠が合っているかどうかとか見てもらえるでしょうし、フィッティングもしてもらえるでしょう。
上記で挙げた8社のうち、小売り企業は田中眼鏡本舗だけでした。(これも、その理由がわかりにくいです)
なお、例の越前市の「めがねの里」(観光バス客を導入してメガネをレンズも一緒に受注即売する)は載っていませんでした。
で、Aさんは、「メガネの小売店も載せるのがよい」という私の提言にはどう思われますか?
また、鯖江商工会議所に、抗議をしたいですか。抗議をするほどでもないと思いますか。
あるいは、抗議はしたいけれど自分は表に出るのはいやなので私に換わって公開質問をしてほしいと思われますか?
A
鯖江市での眼鏡産業は、数少ない基幹産業の大きな部分を占めております。
この産業にかかわっておられる人々の中には、私どものお客さまも幾人かは居られます。
その産業が衰退して行くことは、いかんともしがたい複雑な思いです。
以前から鯖江では試作品や、不良在庫他、フレ-ムの流出は頻繁で、自動玉摺り機の中古が出回りだしたこのごろでは、遠近の眼鏡まで、手がけるところもいくつかあるようです。
お客さまにバランスの取れたフレームと、快適なレンズを加工調製して、ベストなフィッティングで初めて眼鏡としての機能が得られる商品になることを、鯖江、福井で理解して頂けないのは、とても残念です。
このことは、地元の私たちは幾度も何年も訴え続けて参りましたが、世代が変わるたび、堂々巡りです。それゆえ、鯖江商工会議所への 抗議はするほどでもないと思います。
また、岡本さんの提案の小売店のマップは、JR福井の観光案内所にも出して頂いておりますが、いまだ当店には、1件の来店者もないのが実情です。
いろいろご提案ありがとうございました。
岡本
Aさんは、抗議をしても無駄だと思っておられるのですね。
それで、この産地マップに小売店が1店だけ混じっていますが、なぜでしょう?
A
よくはわかりませんが、商工会議所の会員ではないでしょうか?
岡本
なるほど……。そうかもしれませんね。
福井県眼鏡協会が直接通販を
岡本
南青山のTHE291のアンテナショップは、社団法人福井県眼鏡協会が事業主体で、行政からの援助も受けて経営しているのですが、その協会がネットでTHE291の枠をネットで通販もしています。
これぞまさしく、産地直売の通販ですね。
http://takumi.megane.gr.jp/webapps/index.jsp
A
まさか、通販までするサイトを社団法人 福井県眼鏡協会が運営しておったとは知らなかったです。これには同県人として憤りを感じます。
まったく彼らは自分たちの製品がどのように消費者に、重宝され使用されるのか、分かっておらないでしょう。
いかに国産の製品(部品)がすぐれていようと、それを快適な商品として調製された上でお客さまに提供されてこそ、その製品が評価されることをまだわかっておらない。
正月に協会の重鎮と会う機会があると思いますので、私の思いを話してみたいと思います。
岡本
今日、この協会の関係者のかたと、この件について電話で話をしました。
「今度黒田さんに会ったら言ってみる」とおっしゃっていましたが、返事が来るのかどうか、わかりません。
金曜日にそのかたが当店に来られますので、そのときに、もう一度言ってみて、らちがあかないようなら公開質問をしようと思います。
なお、この店に検眼設備や加工機などもおいて度付きも受注するということも、そのかたから聞きました。
それはよいとして、問題は下記の3点です。
1)それぞれの枠の人気状況だけでなく、フィッティング性、加工性なども、店の技術者に個別に必ず批評させて、スタイルだけ優先ではない枠を真剣に目指すという意図が本当にあるのかどうかということ。
そういう報告書がきちんと書式化できており、その報告が販売されたすべてのフレームについて、まず経営者に行き、そこから各メーカーに振り分けられて届く、というしくみができているのかどうか。
もし、そういうしくみがなくて、単にフレームの人気傾向(売れ行き)を見るだけの「アンテナショップ」であれば、何をか言わんやである。
2)実際のところ、枠のみの販売も少なくないであろうが、その場合に、フィッティングをするのはもちろんのことであるが、その枠での加工を受ける店のことも煩慮して、たとえば、玉入れ加工や仕上げのフィッティングなどによる枠の破損や傷つきなど生じた場合の補償についての証明書(説明書)を付けるとか、個々の枠における加工上の留意点があるならば、それも添えて渡すとかということをしないのかどうか。
そして、お渡し時点での仕上げのフィッティングや、以後の、枠に関するアフターケアーの調整作業に対する手間、手数について、枠のみ販売した側はどう考えているのか。
その手間をありがたく思い、評価するのならば、それに対する金銭的な見返りも、その枠を受け入れる店に対して配慮すべきではないかということ。
3)そのショップにいる眼鏡技術者が見て、フィッティングや加工に無理があると判断出来る枠の店内在庫を拒否できる権限を技術者に与えているのかどうかということ。
上記のうち、2)については、現在、枠のみを無責任な形でろくなフィッティングもせずに販売することの多い、一部のセレクトショップなどに対する指導的な意味を持ち、ユーザーに対する啓蒙にもなると思うのです。
3)については、我々の店の場合には「これは無理な枠だ」と思えば、仕入れないことにより、あとあとの困惑を未然に防げるわけですが、このショップの店内技術者にはそれができなというのであれば、私には彼らが不憫ですし、ちゃんとした資格を持っている技術者に対して失礼なことだと思います。
そして、もちろんですが、ユーザーに対しても失礼な話です。
うまくフィッティングできない枠、うまく加工できない枠、あるいはたとえば、そりが強すぎるとか、前傾角がなさ過ぎるなどで、光学的に何らかの無理があるとわかっている枠などでメガネを作ればユーザーが掛け心地や見え方などで不満を感じる恐れが強いわけですから。
それを技術者に指摘されてもなお、それを店に並べるというのは、公益法人のするべきことではありません。そういうことをするようであれば、現場の技術者の判断とは関係なく、本部が「流行のスタイルだから」とか「利幅が大きいから」とかの理由で仕入れたフレームが店にならんでしまう量販店と同じレベルのメガネの販売になってしまいます。
それと、(社)福井県眼鏡協会がネットで枠の通販に手を染めていることは、まったく無責任を絵に描いたビジネスに参入していることであり、言語道断です。
公益法人は公益につながることをしないといけないのに、これでは逆です。
なお、同じ公益法人である日本眼鏡技術者協会は、その公式Hpのトップページでメガネの通販を批判していますので、福井県眼鏡協会の黒田会長にはそれをよく読んでいただきたいと思います。そして、「メガネ通販110番」のサイトも。
「THE291のフレームは販売する店が責任を持ってフィッティングをしますので、通販ではお求めいただけません」と宣言して、通販をしている店へは卸販売をしないように、THE291取り扱いの代理店へ通達をする、というのであれば、さすが公益法人!とほめられるでしょうが、現状では、通販されることを忌避しないどころか、自ら通販をするとは……!
それで、私が思うに、このショップで、どうしても断りきれずにやむをえず枠のみを販売する場合には、その枠を使ってメガネに仕上げてくれるメガネ点に対して、次のような「依頼書」をつけておくと良いと思います。
依 頼 書 このたび、(社)福井県眼鏡協会が営む、東京の南青山の「THE291」のアンテナショップで、この枠は販売されました。 この枠にレンズ入れを要望されるお客さまが貴店にいらっしゃいましたら、下記の要領にて、どうかよろしくお願いいたします。 1)この枠におけるレンズ枠入れ加工上の注意点 2)この枠について 〒 ***** 住所 ******** 3)なお、この枠において、設計やフィッティングや加工上の問題点や改良要望点などがございましたら、下記に記入の上、FAX、Eメールまたは封書にてお知らせくださいませ。 枠名 (*********) お知らせくださいましたかたには、薄謝をお送りさせていただきます。 FAX ******* Eメール ********
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(上記の*****のところへは、アンテナショッップで書き入れて、この依頼書を、枠のみ買われたかたに渡すわけです)
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以下、続・産地直売?のメガネ(黒田会長との往復書簡) へと続きます。