(1)商品を受注した場合の返事のしかたについて
(2)代案の提示について
岡本隆博
(1) たとえば、メガネの小売店が卸社やメーカーに、レンズや枠を、ファックスかネットで発注をしたとする。
そして、受注者においてはそのうちの一部または全部において、発注者の希望どおりにはいかない部分があったという場合、そのことを小売店に知らせるのに、
「ファックスで受注したのだから、ファックスに返事を書いて送る」
「ネットで受注したのだから、ネットで返事をする」
という卸社やメーカーが多い。
しかし、それは、常にそうするのが望ましい、のではなくて、発注者の希望通りの商品受注ができない場合には必ず電話で知らせるべきなのである。
そのことがわかっていない卸社やメーカーが多いのでここに私はこの稿を書いておく。
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卸社やメーカーの人は、ファックスやネットでの受注が多いから、常にそれらに注意を払っており、それらを見逃すということがまずない。
見逃したら、自社も損だし、発注先に対してもえらい迷惑をかけることになるからである。
それで、彼らは「自分たちはファックスやネットに常に注意をはらっている。
当然、小売店も同じだろう」と思っている。
ところが実態はさにあらず。
普通の小売店にはファックスやネットで注文が来たりはしない。
小売店に来るファックスはくだらない宣伝か、「さきほどご注文をいただいた商品は、いついつに送ります」とかいうものであり、言ってみれば、見逃しても特にどおってことはないものである。
また、卸社やメーカーとは違って小売店には、常にファックスやパソコンに張り付いている人間などいない。
ネットやファックスで、発注した商品に対する発想予定日などの返事が来ても、そのときには接客をしていて、それを見るのは何時間かあとになる、ということも多い。
はなはだしい場合には、翌日になってから、初めて卸社からの返事のファックスが来ていたことに気がついた、なんてこともある。
その返事の内容が、たとえば、「ご注文いただいたレンズは本日発送します」というようなものなら、まあ、見逃してもよいし受信してから何時間かあとで見てもかまわない。
しかし、そういう返事ではなく
「ご注文いただいた枠のうち、ABCの123番のカラー1は、ありません」というようなものなら、どうだろう。
あるいは、「ナニナニのレンズは、その度数ではできません」という返事ならどうだろう。
それを見る時間が遅れたら、取り返しのつかないことになってしまうことがあるのである。
そういうの事情がわかっていないからこそ、卸やメーカーは、たとえ受注品の全部または一部がない場合にでも「ファックス注文にはファックスで返事」というのを、実行しているケースが多いのである。
だから、ここで私は声を大きくして、日本全国に響き渡るような声で言いたい。
全国の卸社やメーカーのかたがたよ。
ファックスやネットで受注した商品の一部または全部において発注者の希望通りに行かない場合には
絶対に、絶対に、絶対に、「電話で」小売店に知らせるべきだ!
そうしたら、その電話を受けた小売店の人間はたとえ接客中であっても、「忙しくしているときに電話なんかけるなよ」などと、相手をうらむなんてことは絶対にない。
その知らせを受けたら、よく知らせてくれた、と思って、「わかった。では、どうするか、あとでまた連絡する」とか、「そうですか、ではカラー1ではなくカラー2にします」とかいう返事をするのである。
卸社や、メーカーの人にもう一度言う。
小売店の人は、あなた方とは違ってファックスやネットに張り付いてはいない。
だから、受注したものについて、一部にでも「ノー」の部分があれば、絶対に、電話で知らせるべきなのである。
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(2) ついでに、もうひとつ書いておく。
小売店から受注した商品がない(作れない)場合に、単に「それはありません」「それはできません」と返事を送るだけなら、これは、少しきつい言い方になるが、バイトの高校生でもできることなのである。
ちゃんとした月給をもらっている社員であれば、そういう返答では失格である。
では、どのように返事をするのがよいかというと、下記に例を示してみる。
「ご注文いただいた、ABCの1234番のカラー3は、いま品切れですが、同じものでカラー2ならございます。茶色とグレーの違いですが、グレーではいかがでしょうか」
「ご注文いただいた、ABCの1234番のカラー3は、いま品切れですが、同じような形でサイズも同じ48で1233番のカラー3ならあります。
ネットを見ていただきますとその写真も出ていますが、ご検討いただけますでしょうか」
「ご注文いただいたレンズは、この度数ではできません。同じ屈折率で標準径が大きい、○○のレンズなら、この度数でも65mmでできるのですが、○○でもいいでしょうか」
というふうに、必ず、代案を示すのである。
この「代案を示す」というのは、レンズメーカーの場合には比較的なされることが多いが、フレームを受注する卸社では、こういう代案の提示はかなり少ない。
「ABCの1234番のカラー3はありません」という返事を卸社から小売店が受けて、それに対して「だったら、1234のほかのカラーは何があるの?あるいは、ABCでよく似た感じの枠で茶色のものは何かあるの?」と小売店がしたとして、卸社からまたメーカーに電話でそのことをそのまま聞く、というのなら、卸社のその人間は、学生アルバイトなみである。
小売店からそういう「では、違う色ならあるのか」などということを聞く前に、はじめにメーカーから「それはない」という答えが来たときに、「では、・・・・・・・・」という問い返しで、代替になりそうなものがないかどうかを、即座にメーカーに尋ねるべきなのだ。小売店に成り代わって・・・・・
そのようにしてメーカーから得た代案を卸社が代案を小売店に提示したとしても「それ以外はいらない」と言われることももちろんあろう。
なかには、アホな小売店の人間がいて、「ウチは1234のカラー4がほしいと言ってるんや!よけいな売り込みはするな!」と言う人もいるかもしれない。
しかし、たまに、そういうわからずやに出くわしたとしても、それでめげてはいけない。
まともな人間なら、代案の提示を受けて、それは不要だった場合、「ううん・・・とりあえずABCで欲しいのは1234のカラー3ですので、ほかのはいいです」と言うだけだし、そうでなく、「だったら、カラー4でいいよ。ちょうどうちにはカラー4もないから」と言われることもあろう。
代案の提示があると、小売店も助かることが多いし、受注者にも売り上げがあがる可能性があるのになぜ代案の提示が少ないのか・・・・
それはおそらく卸社の社員教育の問題だと、私は推察している。