岡本隆博
本誌58号の記事「植原氏が言う『業界の盲点』とは」に対して、11月26日に眼鏡光学出版社の赤川満氏から書面で下記の趣旨の質問が来た。
「あの記事は無断で転載されたようだ。また、写真についても、最近肖像権の問題がやか
ましくなっている。岡本さんの見解をお聞かせいただきたい」
それで私は、まず下記のような内容の返答をした。
* あれは正当な引用であるから、発行者に無断でも構わない。
すると先方から「正当な引用を越えていると思った」とFAXが来たので、私は
* あれがなぜ正当な引用の範囲を超えているのですか?
* 写真も論評のために必要な引用であり、あの場合には肖像権は関係ない。
肖像権とはどういうものか、おわかりですか?
* 植原氏にコメントを求めたがなかった。
私があの記事で呈上したいくつかの疑問に編集者が代わって答えてくれますか?
……と尋ね、さらに私は「あの記事は今そちらの手元にありますか」と聞いた。
あると答えれば、本の所有者以外の人間がコピーを持っているのだから違法な無断コピー
となってしまう。「ありません」との答が返ってきた。
それで私が「手元に資料がないのにああいう手紙をよこされたのですか! では、あれを借
りてきてください。詳しく解説しますから」と書いて送ると、それっきり答はなかった。
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自分の執筆記事において引用を入れた場合に、論評部分が主で引用部分が従であること、出典を明らかにしていること、どこが引用部分なのかということを明確にしていること、
などの条件にかなっていれば、それは正当な引用であるから、原著者や発行者に転載の許諾を求める必要はない。
雑誌の編集者である赤川氏がその程度のことを知らないはずはないのに、私の書いたもの
を見て短絡的に「無断転載とはどういうこと?!」という問い合わせを私にされたのはなぜか。(ジャーナリストの使命は、事実を述べることと、それに基づいた独自の分析をすることである。それゆえ、ここから、ジャーナリストにとって重要な「分析」をする)
月刊『眼鏡』はこれまで、単なる無断転載は何度もされたことがあり、その都度警告を発して相手が謝罪をしたということがあるようだ。
しかし、ああいうふうな一部引用による論評をされたことはなかったのであろう。それゆえ、私の書いた記事を見たら条件反射的に「また、不当な無断引用をされた」と思ってしまわれたのだと思う。
なお下線部は、この業界内では言論人相互の真剣な議論(書いたものによる)がまれであることの証拠であろう。
(H15.3.15)