[枠メーカーさんに] 専用のケースはいりません

                             アイトピア 岡本隆博

ありがた迷惑です

ときどきメガネに専用ケースとしてついている筒型ケースはダメです。
少しフィッティングすると、もうメガネが入らなくなります。
それと、筒型のケースはワイピングクロスを入れにくいので感心できません。
特に有名ブランドでもない場合には、枠についてくる専用ケースは、メーカーの自己満足に過ぎないのではないかと、私には感じられます。

メガネフレームで、シルエットのミニマルなどのように、サイズが特殊で専用ケースを必要とするものは、もちろん専用ケースをつけてもらわないと困るのですが、そうではなくて、サイズ的には普通のものの場合は、かえってありがた迷惑です。

専用ケースって、どんどん増えてきて、けっこう場所をとります。
サービスケースなら最小限度のもので回していくということも可能ですが、専用ケースでは抱え込まないといけません。
独立店舗で収納に余裕のある店ならいいですが、インショップなんかだと、たくさんのケースを置いておく場所がたいへんだと思います。

問屋やメーカーの人が「この枠には専用ケースがあるのですが、不要であればその分ウン
百円を値引きします」と言った……という話は聞いたことがありません。
おそらく、そんなことをするのは面倒なのでしょう。
しかし、そういう措置をやってもらうと、専用ケースが歓迎されているかどうか、そのメーカーにはよくわかると思うのですけれど。

 

抱き合わせ販売だ

よく考えると、ケースつきの枠って、一種の抱きあわせ販売なんですよね。
「この枠を仕入れるには専用ケースも一緒に仕入れてもらわないと売りません」ということに相違ないわけで、決して無料サービスではないわけです。

たとえば、メーカーでのコストが300円の専用ケースがついていて、メーカーは枠のコストに300円を載せて卸屋への納入価格としたのなら、小売店が負担する「ケース代」は300円ではすみません。
小売店は問屋のマージンまで含めて専用ケースを買っているわけです。

実際のところ我々が「収納場所に困るので専用ケースはつけないでくれ」とか言っても、ケースの分を値引きしてくれるわけではないので、現状では「まあ、サービスケース一個分のコストが下がるから、専用ケースももらっとくか」となりがちですよね。

それで、現実には専用ケースがその枠についていたということをうっかり忘れて店のサー
ビスケースに入れて渡してしまうことも多いです。そうすると専用ケースがどんどん残ってきます。
そういう「うっかり」を防ぐには値札の裏に「専用ケースあり」と書いておかなくてはならないわけですが、それも見落としがちです。

なぜならば、コンセプト系などではない普通のメガネ店なら専用ケースがついていない枠の方が多いので、一つの枠が売れたときに、値札の裏に「専用ケースあり」と書いてあるかどうかを確認する習慣がつきにくいからです。

ゆえに、店には、渡しもれの専用ケースが増えていくばかり、という状態になってしまうのです。

メーカーのかたがたはそういう実態をご存じ無く、自社の枠につけている専用ケースは必
ず疎漏なくその枠を入れて渡してもらえるものと思っておられるでしょうし、専用ケースを迷惑だと思っている小売店などないと思っておられるのではないでしょうか。

 

フィッティング後にどうなるか

それと、枠のメーカーさんはフィッティングの実情をご存じないことが多いです。
たとえば、フィッティングしたあともきちんと収まること、という条件があると、モダンをぐっと下に曲げたときなどのことを考えると、ケースの縦幅を相当長めにしないといけません。

また、横の長さも、いくつかの違うサイズの枠のことを考えると、どうしても長めに作らざるを得ません。
そうなると、必ず大きめの専用ケースとせざるを得なくなり、「実際には殆どの場合に枠が中で泳いでしまう」ということになりがちです。

たとえば、9999を自店にフィッティングやレンズ入れ替えなどでお持ち込みになる場合、ケースに入れて持ってこられると、たいていは中で枠がゴトゴト泳いでいます。
ああいう場合、中で泳がないケースもサービスでお渡しするという配慮を持つ店は少ない
のでしょう。

メーカーにしてみれば、大きめのケースにしたので、ケースに入らないのではなく、入る
のだから文句はないだろう、ということでしょうけれど、私は、とにかく、できあがりメガネをケースの中で泳ぐ状態でお渡しするのはイヤですので、専用ケースがあっても、それでは泳ぐ、というときには泳がないケースもおつけしています。

子供枠など、どうしようもない場合を除いては、常に、中でゴトゴトしない最適のサイズのケースに入れることを当店では基本方針としています。
だから当店では20種類以上の種類のサービスケースを用意しているのです。

専用ケースをつけているメーカーは、フィッティングによって入らなくなる、ということを知らないメーカーが多いと思います。
その場合は、そのブランドの枠のうち一番大きいのがそのまま入るだけの大きさにしてあるわけですが、それでも、腕の屈折点をやや蝶番の方に変えて腕先を少し下に強く曲げると入らなくなってしまうことや、腕の丸みを変えると床高で足りなくなることもある、などのことについては、おそらく想定外でしょう。

ですから、専用ケースというものは、フィッティングによって入らなくなるおそれが常にあるものなのですから、ブランドがどうであれ、私には専用ケースはありがた迷惑なのです。

そして私は、シルエットのミニマルなどの特殊なものでなければ、どんなブランドのものであっても自店ネームの入ったケースに入れてお渡ししたい、と思っています。
なぜなら、メガネ屋にとって大事なことは、個々の顧客における有名ブランドに対するブランドロイヤルティーの昂揚に協力することではなく、自店に対するストアロイヤルティーを高めることだと思っていますから。

それは枠でもレンズでも同じです。(自店のHPも、その方針で作っています。)
「有名ブランド枠でも、特殊サイズでなければ専用ケースは一切不要、枠とケースの抱き
合わせ販売はやめてほしい!」というメガネ屋です、私は。

そして、専用ケースが欲しいというメガネ屋には、それを別売とすればよいと思います。
買ってまでほしいとは思わない、と思われるメガネ屋さんも多いでしょうが、実は、我々は抱き合わせで買っているのです。タダでついてきたのではないのです。

投稿日:2020年10月24日 更新日:

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