その話はホントは、こうでした
辻
前に話題になったムーブの疑問について、先日西村さんと直接話をする機会がありました。 MLでの話は済んでましたし、雑誌「眼鏡」にも概略が載っているのでご存知の方もおられるとは思いますが、保田さんがテレビ局から聞かれた内容とは少し違うようなのでお伝えします。
1.そもそもの発端は、テレビに出ていた女性の息子さんが量販店で眼鏡を作るのに付いて行ったところ、その店ですごく便利なのがあるのでどうですかと勧められて作ったところにあります。
最初の検査も眼鏡店で行ない、ご本人には全く初めての眼鏡だったのですが、3ヶ月無料保障が付いているし、中近が便利ですよと勧められて、フレームもレンズもセイコーので、約8万円支払ったそうです。
2.後日受け取りに行ったところ、遠くも近くも見にくくてふらついたけれど、慣らしてくださいとの事でした。 調子が悪いのは自分の眼が悪いのかと思って公立病院の眼科に行ったところ、左右のランクが違うし、初めての眼鏡に累進は良くないので専用にしなさいと処方されたそうです。 また、もっとしっかりした眼鏡店で作りなさいとも言われたそうです。
3.そこで再度眼鏡店に行ったところ、眼科で言われたランクの説明にも「そんなはずは無い」と言われただけでハッキリせず、交換もすぐ出来ないとの事のうえ、3回とも応対者が異なり、不信感を持たれたそうです。途中勝手にしてくださいとまで言わたれりしたとのことです。
4.そこでムーブの疑問に質問したところ、最初は眼鏡学校にテレビから問い合わせがあったのを西村さんに振ったそうです。
西村さんのところで測定したら、遠見度数は不同視気味の混合性乱視(C-2.00程度)だったそうで、眼鏡店の測定調製では左右同度数で、遠用がC-1.00の単性乱視で加入度+2.00の中近にしてたので、加入も弱いし、どこもハッキリせずにふらつくだけの眼鏡になっていたようです。 眼科でランクが違うと言われたのは左右の度数の違いのことのようです。
5.西村さんの説明でご本人は納得し、レンズも最初の眼鏡店で変えてもらいましたが、これだけでは単なるクレ-ム問題なので、テレビディレクターのほうが話の途中で認定眼鏡士のことや、眼鏡学校が話題になったのをまとめて取り上げたそうです。
以上が概略で、大事なところは先ほど西村さんに聞きなおしていますので間違い無いと思います。
いずれにせよ販売方法や度数測定と調製の発端にも問題があるし、クレームの時の応対でさらに問題を大きくしたように思います。
私たちもトラブルがある時ほど慎重に応対しなければいけないなと思った次第です。
またテレビ局のいい加減さが
岡本
そうだったんですか。保田さんが電話でテレビ局(あるいは、その下請け屋)から聞いた話は、眼科の処方箋で作ったメガネの調子が悪いという話でしたが、そこのところが違いますね。
だったら、西村さんは、業界と眼科とに向けて、あの話の真相はこうだ! という話(発表)をすべきだと思います。
これでまた、テレビ関係者が、けっこういい加減な作り話をしていることが、わかりました。
この場合、眼科には非はなかったわけで、それだからテレビでは、その具合の悪いメガネの度数の処方が眼科でなされたのか、メガネ屋でなされたのかをぼかしていたわけですね。そこが肝心なところなのに。
その眼科は、番組の上では、いわばヌレギヌを着せられたわけですが、名前も出ていないし、ま、抗議も来ないだろう……ってなもんでしょう。
一方、この番組を見た眼科関係者もいたと思いますが、たとえば眼科医会としても、その処方がどこでなされたかは定かではないにしても、メガネを調べてみてそういう的はずれのことを言う眼科もないとは言えないから、「そんなアホな眼科は無いはず。こんな話は作り話だろう。 もしこの話が本当だというのなら、どこの眼科なのか、明らかにせよ!」などと抗議することもできなかったのだと推察します。
ヘタにつつくとヤブヘビになる、と思ったのでしょうネ。
それにしても、ホントにテレビ局は腐りきっていますね。
マスコミは司法、立法、行政に次ぐ第4の権力だと言われますが、アクトン卿の「権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する」という箴言を思い出しました。
●
保田
私がテレビ局の担当者から聞いた内容は、先日のMLでお話した内容で、大筋はほぼ間違いはありません。
辻さんのお話を伺うと、テレビ局はかなり作為的な思惑をもって私に対して問い合わせをしていたんですね。
私のそもそものテレビ嫌いは、こんなところにあります。
岡本
それにしても、この量販店もひどいですね。
自店で処方調製したメガネが具合が悪く、その訴えに対して真摯に耳を傾けず、それでその人が眼科へ行って診てもらって、眼科で処方してもらった処方箋をお客さんが持って来たら、その処方箋の度数で仮枠にレンズを入れたものと、具合の悪いメガネでの見え方を比べてもらって、処方箋の方が良いとおっしゃれば、おわびしてその度数に入れ替えるのが普通です。
しかし、店はそういう対応をしなかったものだからユーザーがテレビ局に相談を持ち込み、それで、その店の処方調製のまずさが判明したのですが、それで後日にテレビ局がらみの西村さんの説明をまたお客さんから聞かされて、そこでやっと観念してレンズを入れ替えるとは……。
株も上場しているような量販店ともなれば、目先の売上げ(儲け)が第一、売ってしまえば、あとは知らん、ということになりかねないのですね。
それで、テレビ局がそのメガネ店を悪者扱いしなかったのは、今後の広告費のことも考慮して……ということでしょうか?
でも、店の名前を出さなければ、広告費うんぬんの心配はないだろうに……、
どうもよくわかりませんね。
それと、今回のことで、もう一つ分かったこととして、売上げ第1の店では、単に単価アップのために、単焦点の近用でも問題なさそうな人にまで、中近両用や近近両用の累進レンズを勧めている(販売している)ところがあるということです。
それで、なぜそういうことになるのかと言えば、量販チェーン店の場合には、とにかく、末端の販売員に対する上からの評価は、技術ではなく売上げ金額でなされるされるからだと思います。
眼鏡光学出版の報道内容がおかしい
辻
私の文章が悪くて済みません。私の3.ではレンズは交換しますが、すぐには出来なかったとの意味のつもりでした。訂正させていただきます。
いずれにせよ、相手が次々変わるし、この店の説明では納得されずに不信感ばかり増大したようです。
また、多分(ここは私の推測です)スムーズには交換になっていないので、ムーブの疑問が絡んできたことになります。
さきほどお伝えしてなかったのですが、西村さんはレンズ代金が違うので、差額を返してもらえるのではとアドバイスしたそうで、そのお客様が最終的に眼鏡を取りに行ったときにそれを言ったら、レンズの値段は一緒ですと言われたそうです。
また眼科の処方はたしかCは1.5だったと聞きました。Sは左右で違う度数だったと思いますが、聞き忘れました。その度数で入れ替えてもらったようです。
お客様は、二度とその店には行かないと言っているそうです。
この話を聞いていると、眼鏡販売で理論も必要なことが良くわかります。私も学校等で理論を教えますが、理論等必要ないと思われる方も居られます。
技術も大切ですが、お客様の信頼を得るためには、特にトラブルが生じたときは、ちゃんとした説明が出来るためにも、理論が大切なのを実感しました。
前回もお伝えしましたが、雑誌「眼鏡」等に、簡単に概要が記事として載っています。
また皆さんおっしゃるようにテレビはかなり作為が入るので、裏を考えながら見ないといけないことも多いと思いますが、今回は私も教えている眼鏡学校が好意的に取り上げられているので(学生で変なコメントしたのが居たそうですがそれはカットされてました)少し安心して見られました。
岡本
辻さんは、その番組をご覧になったのですね。
初めの眼鏡の処方を誰がしたのかということはぼかされていたわけですね。
そこが肝心なのですけど。
眼鏡新聞に載っている話を読むと、眼科はメガネを検査する能力がまるでダメな悪者になっており、そのメガネ屋は眼科にヌレギヌを着せられた被害者で落ち度無し、という感じですよね。
初めの処方者は誰?
辻
月刊「眼鏡」とか眼鏡新聞での取り上げ方だと、どこで検査されたのかがハッキリしてませんね。テレビのほうも見ましたが、学校の方が気になってたので、出だしがどうだったかはっきり覚えておりません。
ビデオにとってありますので、もう一度見てからご返事します。
岡本
はじめの処方者について、テレビではぼかしていたので、業界誌でも書いてないのかなと思いますが、ビデオをご覧になってのお返事を待っています。
それと、そのユーザーのメガネは結局どう解決したかということについて番組で触れていなかったのかどうかということについても、お聞かせくだされば幸いです。
辻
ビデオを見てみましたが、フリップでかなり丁寧に説明されていました。
テレビの説明での流れは次の通りです。
1.生まれて初めて近くの眼鏡チェーン店で眼鏡を作ったけれど、見づらくあまりにも疲れる。3ヵ月無料保障なのでちゃんとした処方箋を持っていった方が良いと思って病院へ行った。
2.病院の検査員に「左右のランクが違う」と言われて眼鏡店に行くと、「そんなはずは無い」と言われた。どちらが正しいのでしょうか?私はだまされたのでしょうか?
との質問から始まっていました
そのあとに「レンズを渡されて、確かめるんだったらあなたが確かめてきたらと放り投げられてパニックになった」の本人のコメントも入っていました。
私のビデオは、最後まで入ってなかったので、最後にどうなったのかがわかりませんでした(テレビでちゃんと結末を報告していたか?)。 知人でDVDに取っていた人がいたので、コピーして送ってもらいますので、それを岡本さんに送ります。それを見ていただく方がよりわかりやすいと思います。
岡本
テレビで初めのことを話していたのなら、眼鏡新聞や月刊「眼鏡」で、このことを書いていないのは、おかしいですね。
業界誌というものは、報道機関ではなく広告代理店だということなのでしょう。
なお、この初めの段階では、見え方が具合が悪いと思ったときに、ます眼鏡店に相談に行ってそれでどういう対応だったのかということが重要だと思います。
では、お手間をかけますが、そのビデオをよろしくお願いします。
それにしても、眼鏡光学出版社のあまりにもずさんな報道は、テレビ局以上だと言えるかもしれませんね。
番組のDVDを見てみると
岡本
辻さんから送っていただいた「ムーブの疑問」のDVDを見ました。
初めの司会者の説明は、辻さんが前回のメールで書かれた1と2の通りですが、メガネの具合が悪いということで、眼科へ行くまえに、店に苦情を言いに行ったのかどうかが説明されていないわけで、これは説明不足だと言わざるをえませんね。
そのあとで女性が言った「お店に行って聞いたときには、レンズを渡されて、確かめるんだったらあなたが確かめてきたら、と放り投げられてパニックになった」 という発言があったのですが、これは、辻さんの説明における、メガネを初めて受け取るときに見えにくいことを言ったとき……ではなく、メガネを使い始めて調子が悪く、でも店へは行かずに眼科へ行って、「ランクが違うウンヌン」を言われて、眼科の処方箋を持って店へ行ったとき……のことなのでしょう。
「確かめるんだったらあなたが確かめてきたら」 という言い方は、眼科はランクが違う
レンズだなんて言うけれど、そんなことあり得ない、という返事とつながっているわけです。
眼科の処方箋を持ってきた人が「こちらの処方箋の度の方が良く見える」と言っているのに、そういう答え方をするのは、殊勝なところがまったくなくて、たしかにひどい店だとは思います。
ただ、店の人間にしてみれば、調子が悪いのなら、眼科に行く前にまず店に相談に来てほしかったと思って、多少ヘソを曲げたということもあると思うのです。
もっとも、初めにメガネを渡したときにこの女性が見えにくさを言ったときの店の人間の対応の様子からしてこの女性は、「あの店へ行ってもまじめに対応してもらえそうになくて適当にあしらわれるだけのようだから、眼科へ行こう」、と思ったのかもしれませんので、まず店へ相談に行かずに眼科へ直行したのも、無理はないかもしれませんが……この場合は。
我々でも、たまに経験しますね。(何年かに一度くらい?)お渡ししたメガネが具合が悪いからと言うことを、店へは何も言ってこないで、すぐに眼科へ行くかたがおられます。
まあ、眼科よりも測定レベルが低い店の場合には、それも一つの方法かもしれません が……。
それで、その眼科でもらった処方度数が当方で測って作ったメガネよりもずっと良さそうなのであれば、こちらはもう、かしこまらざるを得ないし、無料でのレンズ入れ換えは当然だとしても、処方度数が五十歩百歩のものだったり、むしろ良くなさそうなものだったら、困惑しかないですね。
それから、西村さんがその女性の検眼をしたりメガネを調べたりしたことや、どういう判断をしたか(西村さんは「販売員の技術不足」と言いましたが「検査員の技術不足」と言ってほしかったです)ということは、番組でも放送されたし眼鏡新聞にも書いてありましたが、女性が店でヒドい対応をされたことやコメンテーターが「その店の対応が悪い」と言っていたことについては、眼鏡新聞には書かれていません。
まずいメガネの処方者が誰であるかということが番組では出ていたのに眼鏡新聞で省いた、というのもおかしいですが、そのひどい対応についても省いたのはいただけません。
眼鏡新聞はそのチェーン店に遠慮しているのでしょう。
それと、そのチェーン店(私はその店の名前は辻さんから聞きました)には認定眼鏡士もけっこういるようです。
ただ、その支店にもいたのかどうかはわかりませんが、そのチェーン店は関西発祥で昔から大阪眼衛の眼鏡士がかなりいましたし、いま、認定眼鏡士もけっこういます。
(協会のHPの眼鏡士のリストに、その店の眼鏡士が大勢載っています)
西村さんは、その店にも認定眼鏡士がいないとも限らないということはご存知だったと思いますので、さすがに「その店には認定眼鏡士がいなかったはずでウンヌン」とはおっしゃらずに、その店のことはひとまず置いて、という感じで、メガネを作るのならなるべく認定眼鏡士のいる店で、という言い方をされていました。
あの流れでは西村さんの立場的には、あの程度の言い方になるのでしょうネ。
なお、この一件が結局どう解決したかはテレビでは何も言っておらず、その眼科の処方箋でその店で無料で入れ直してもらったとは、もちろん言っていません。
なぜここをテレビでボカシたのかはわかりませんが、眼鏡光学出版社は、西村さんに、そのことを確認して、それも眼鏡新聞などに書いてほしかったですね。
同出版社はあくまでも、眼科を悪者にしたかったのでしょうか?眼科からの広告はほとんどないから……。
若い人なら、合わないメガネでもOK?
岡本
それと、西村さんはテレビで「若いときには少々度数が違った眼鏡でも、眼の方で合わせてしまってなんとかなるけれど、歳がいくとそうはいかないので中高年齢者の『メガネが合わない』というクレームが多い」という主旨のことをおっしゃいましたが、あれは、誤解を与えかねない表現です。
「それなら、若い自分は検眼技術がいまいちのような安売り店でメガネを買うのもいいのかな」みたいに受け取られ兼ねません。
西村さんには、齢による区別などせずに、合っていないメガネは、目、脳、身体に悪い影響を与えることがある……というように言ってほしかったです。
●
それで、今日、実際の番組を見た結論としては、以下のようになります。
テレビでは、その店の悪さをちゃんと言っているにもかかわらず、それを業界に向けて報じた眼鏡光学出版社の報道内容は、正義の味方(眼科)と悪者(チェーン店)が逆になってしまっています。
ですから、同出版社はこのチェーン店を故意にかばっているという点が否めず、それが私にはどうにも不満で、たとえ名前を出さなくても、このチェーン店の悪さをはっきりと書いてほしかったと思います。
最後に一言、西村さんにおわびをしておきます。
この話であえて眼科の不足な点を言えば、患者さんが「左右でグレ-ドの違うレンズを使ってある」というような誤った理解をするような説明のしかたがヘタであり、誤解されないように、「度数が良くないのです、あなたの場合には左右でかなり度数が違うのに、このメガネは左右で同じ度数になっているので合わないのです」と分かりやすく説明をしてあげたらよかったという点や、あるいは、メガネが初めてなら近用累進よりも単焦点の方がよいという単純な決めつけを言ったという点などが挙げられます。
そういう不足な点はあるにしても、この話では、眼科はさほど悪くはないので、西村さんが眼科批判をこの番組でおっしゃらなかったことは、まったくおかしなことではないわけで、テレビ局のウソ(はじめに眼科で処方したメガネ)を聞かされた保田さんのMLでの発言(保田さんも、聞いたままをそのままおっしゃったのですから、保田さんにも落ち度はないわけです)を聞いて、番組の録画をきちんと見て確認しないままに私が西村さんに対して「眼科批判をすべき」と申し上げたことをここで撤回し、おわびをします。
申しわけありませんでした。
●
保田
岡本さんから番組のDVDを送ってもらい、見てみました。
番組では、このかたは眼鏡処方箋を持参されて作ったわけではなくメガネ店で検眼をして作ったとのことです。
先日私は「眼科の処方箋で作ったメガネが具合が悪かった」と言いましたが、テレビ局の担当者から電話でそう聞いたように思うのですが、もしかして私の思い違いだったのかもわかりません。
もし番組の通りであれば、紛らわしい発言をしてしまったことをお詫びいたします。
それで、番組を見ての感想としては、この相談者や視聴者の疑問に答えるというより「認定眼鏡士」や協会の狙いとする「資格制度の推進」の宣伝に比重が置かれていた感じがします。
その眼鏡店や眼科での、コンサルティングや検査の内容などにも突っ込んだ取材であれば面白かったのですが……。
その眼鏡店担当者の技術レベルの問題は当然あったとしても、今回のトラブルはその対応のまずさが第一の原因でしょう。
そして、「レンズのランクが違う」と言った眼科の”詳細な”処方箋の内容についても、それはどうだったのか興味があります。
本来なら、その眼科においても、そのかたに対してもう少し納得のいく説明がなされてしかるべきだと思いました。
岡本
そのヘンは我々専門家と一般視聴者の興味の対象の違いということで、初めのメガネや眼科の処方箋の度数の数値などは省略されたのと思います。
いずれにしても、眼鏡光学出版社の番組紹介記事の内容は、悪いメガネ店だったという大事なところを抜いてあって、改めて同社の報道姿勢に疑問を感じました。
(了)