2014.10.10 岡本隆博
2~3年前から、メガネ業界では、ブルーライトカットのレンズが一種のブームとなっています。 その発端はおそらく、あるチェーン店のPC用メガネ(度なし)でしょう。
それについては、私が代表を務める「パソコンメガネ研究会」ではその公式サイトの、約2年前に下記の記事をアップしました。
http://usukal.biz/pc/blue121203.html
ここにおいては、PC作業用のレンズとしては、物理光学的な対策、すなわち、青色光を減らす分光透過率的なことよりも幾何光学的な対策、すなわち眼の無理な調節を防ぐための度数をどうするかということの方がずっと重要なのであるということを主張しているわけですが、
老眼年代以前の年齢の人で、遠見裸眼視力の良い人は、まさかPC画面を見るのに、度つきのメガネが良いとは思わないで、依然として、度無しでカラーつきのPCメガネを試す人が多いようです。
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それで、その後もメガネ業界においては「バスに乗り遅れるな」とばかりに、レンズメーカーは、ブルーライトカットレンズの新製品を出してきますし、多くのメガネ店も、あまり深く考えずに、単価アップに具合がよいという考えからでしょうか、宣伝チラシや自店のHPにおいて、ブルーライトカットレンズの紹介に力を入れています。
ところが私は、PCメガネを膨大な数量販売したJINSさんに対して、下記のような公開質問をしたことがあります。
http://www.ggm.jp/gkkk/1304253.html
http://www.ggm.jp/gkkk/1308191.html
さらに、下記のような記事も書いたことがあります
http://usukal.biz/loupe/1406141.html
また、最近、あるメガネ店に対して下記のような質問もしました。
(質問5をご覧ください)
http://www.ggm.jp/gkkk/1409211.html
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それと、重要なことは、ブルーライトカットレンズが眼精疲労を軽減させる効果があるのかどうかということについて、ちゃんとした比較治験がなされていないことです。
たとえば、まず、PC作業で眼精疲労が出る人を200人集めます。
それらの人たちに
1)パソコンを見るのに具合の良い度数のレンズで
2)100人には、ブルーライトカットのレンズのメガネ
3)別の100人には、プラセボのカラーレンズのメガネ
この条件で、同じ時間PC作業をしてもらって眼精疲労の出方に有意な差が出るかどうかをやってみればよいのです。
しかし、そういう治験をしてみて、もし有意な差が出なければ、これまで、いわば業界ぐるみでやってきたことの意義を問われることになってしまいますからどこのメーカーも、メガネ店も、いまさらそんな治験をしようとはしないでしょう。
また、特にメガネ店のかたには、よく注意をしていただきたいのですが、どのレンズメーカーも、ブルーライトカットレンズによりPC作業による眼精疲労が軽減するとか、解消するとか、そういう宣伝はしていないはずです。(少なくとも公表される宣伝物においては)
たとえば、以前に私は有名レンズメーカーに対して下記の公開質問をしましたが、これに対しては、マトをはずした回答が来ただけでしたので、先方の了解を得て、回答を公表することは避けました。
http://www.ggm.jp/gkkk/1304252.html
もちろんですが、そのメーカーのHPにおいて、いまではすでにこの記述はなくなっています。
* なお、この質問がもしもとんでもない質問であったのなら私は営業妨害で訴訟を起こされているでしょうが、そういうことにならなかった理由は、私のこの質問がおかしな質問ではなかったから、ということです。
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そして、つい先日、私は下記の記事を見つけました。
http://www.m-bsys.com/knowledge/pc-glasses_kwsk
このかたは、ブルーライトカットレンズの効果を全否定しているわけではありませんが、メガネ業界の多くのレンズメーカーやメガネ店にとってはありがたくない内容となるようで、私は基本的にこの人の意見を支持します。(どうやら、大半の人にとっては、いわゆるブルーライトカットレンズでパソコン作業をすることのメリットはあまりないようです)
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ところで、最近巷では、ブルーライトカットのメガネをかけた人をときどき見かけます。
私自身の印象としては、どちらかと言えば、パソコンを長い時間見ているようではない、中年以降の年代で、経済的に余裕がありそうな人に、この種のレンズのメガネを常用でかけている人が多いように思います。
ということは、単価アップの上手なメガネ屋さんが、「この人なら、薄型非球面の高級レンズでさらにブルーライトカットもつけて、割高のレンズを薦めても買ってくれそうだ」
と思って、そういうメガネを薦めて販売しているということかもしれません。
この記事を読んでいるあなたが、メガネ屋さんであれば、あなたは、商売上手な眼鏡販売士でしょうか。 それとも、まじめな眼鏡士でしょうか。