岡本隆博
パッドには3通りあるが
さきほど、出張中というかたが来店されて、パッドが一つ取れてどこかへ行ってしまったが、付けてもらえますか、とのことです。
ふちなしで、クリングスのところはあまり見かけない小さい長方形のパッド付けグチでしたので、これに合うものは当店にはございませんと申し上げるほかはありませんでした。
パッドをクリングス足につける方式は、大きくわけて次の3とおりです。
1)普通の箱蝶
2)ワンタッチ(カザールなどに使用)
3)その他
x 巻式など、サンニシムラで入手できるもの
y サンニシムラでは入手できないもの
いま出回っている枠についているパッドについては、1)が大半で、次に2)が多いのですが、xとvではどちらが多いのか、私は知りません。
1)と2)は、どこのメガネ店でもこの種のパッドは置いているはずです。
3)のxについては、その規格のパッドのついたメガネを扱っている店なら置いているでしょうけれど、そういう枠がない店は置いていないのではないでしょうか。
ですので、xのパッドのメガネ店での一般的な準備状況は、当然ながら1)や2)よりも低くなります。
ですのでyのパッドがついたメガネを購入した人は、あとで他店でパッド交換をしてもらえる可能性は低いわけですし、購入店でも、いつ行っても交換用のパッドが用意されているとは限らないわけです。
日眼研の会員のHさんは、yのパッド付きの枠を仕入れるときには、交換用のパッドを余分につけてもらうこともあるとおっしゃっていました。
この種のメガネを販売するときには、パッドが特殊なものであり、他店では交換はまず無理、ということを言うか言わないかということがあるのですが、それを言うと「ううん……、わし、来年に引越するかもしらんから、それなら、やめとく」と言われると、折角気に入っていただいたのに、水を差すことになりかねませんから難しいところですネ。
でも、それを言わないで販売しますと、お客さんがそのメガネを使って何年か(何カ月か)のちに、なにかの都合で他店へパッド取り替え(落ちた、ということに限らず、古い感じになったとか)で行かれた場合、できません、と言われたら「あのメガネ屋、そんなパッドがついているなんて言わなかったのに」と恨まれることにもなりかねません。
当店の場合は、ビジネス街ということで引越をされるかたも多く、仕入れのときにたとえその独自のパッドを余分にもらったとしても、そのうちにどこに行ったかわからなくなってしまうこともありそうですし、他店へ行かれたときのことを考えると、独自パッドのものは、まず仕入れません、というか、仕入れた記憶がありません。
気が付かずにうっかり仕入れたものはあるかもしれませんが、気がついたら仕入れません。
私に言わせれば、独自パッドというのは、まあ、デザイナーの独り善がりですね。
必然性があって、その独自パッドになっているものは非常に少ないと思います。
そんなところで個性なんか発揮してもらわなくていいのに……。
メガネのクリングスにつけるバッドの方式としては、箱蝶、ワンタッチ、巻式、その3者のうちのどれかで十分なハズです。
スポーツ用サングラスなんかだと自由にやっていただいていいですが、矯正枠においては、互換性のないものはやめてほしいです。
あ、そうそう。もう10年近く前のことですが、ふちなしの18金の枠を仕入れました。
ワンタッチの規格のパッドだと思っていたのですが、あるとき、それが共通規格のワンタッチとは違う、似て非なるものだということがわかり、問屋さんに返品した……ということがあります。
あれなんかは、まったく必然性がないのに、独自規格にしてあったのです。
まったく、理解に苦しみます。
18金の枠で箱蝶にすると、あの細いネジも18金で作らざるを得ないでしょう。
そうすると折れの問題が出てきます。
それで、箱蝶でも、例のプラスチックのピンが入ったのもありますが、あれはなんだか安っぽいし、ピンの抜き差しも面倒です。
また、箱蝶方式でパッド代を安くあげようということで金具なしのパッドにすると突起が
折れやすいので感心できません。
だから18金の場合には、互換性のあるワンタッチ式のクリングスにすればよいわけで、そうしたら、ネジで苦労をしないし、パッドもわざわざ作らなくてよいのです。
ユーザーのかたにもお願い
それと、この機会にユーザーのかたがたにも私は申し上げておきたいです。
「メガネを買うときには、このメガネはどこの店でもパッドを交換できますか、と聞いて
みてください」と。
私が作ったボールペン「アーテルゴ1」
http://www.ggm.jp/labo/hatumei.html
を買おうかと思う人は、たいてい、替え芯はどこの文具店でも手に入るかどうかを気にされます。(もちろん私はどこでも買える芯を入れています)
メガネのパッドは替え芯ほどの交換頻度はないのですが、それでも、もし落ちてしまって、あと取り付けるものがなければ、もうそのメガネは使えないのですからね。
別にたいしたことのない独自パッドをつける設計者は、そういうユーザーの困惑など、考えていないのでしょう。
自分が好きなものを作るだけの勝手人間、ですね。
メガネ以外の分野で有名なデザイナーなどが設計した枠にも、その種のパッドが多いように思います。
また私の友人のAさん(メガネ屋さん)は次のようにおっしゃっています。
「箱蝶でも微妙にサイズの違いがあり、ぐらつきが大きくなったりしますので、規格は統一して欲しいと思います。ネジの太さなども」
そう言えばたしかに、箱蝶に入るには入っても、きつくて動かないとか、逆に緩すぎてグラグラするというのもありますね。
箱蝶とパッドについている突起に、業界の標準サイズが決められているのでしょうか?
(2008.11.10)