HOYAの累進レンズをパリミキで枠入れ
原
視覚機能研究会のホームページをご覧になって55歳の男性のかたがご来店になりました。
現在、遠近両用の累進レンズを使用されていますが、遠見も近見も見えずらく、特に左眼だけ二重に見えるとのことでした。
2、3か月前に、行きつけのパリミキでレンズ交換をされ、HOYAのID1.7という、屈折率1.7の両面複合設計の遠近累進レンズが入っていました。
度数は
R=S-8.75 C-1.00 Ax100 ADD1.75
L=S-7.25 C-1.00 Ax54 ADD1.75
でしたが、フィッテイングの状態が一目でわかるほどにダメで、見えにくいのは当然のようでした。
頂点間距離が長すぎるのと、前傾角が起きすぎるようでした。
フィッティングをし直すと、見え方はぐんと良くなったようです。
それで検査をしたところ、下記のようになりました。
RV=(1.0×S-9.00 C-0.50 Ax100 ADD2.00)
LV=(1.0×S-7.25 C-1.00 Ax40 ADD2.25)
ただ、左眼の二重に見えるというのは少し残るようでした。医学的なところに原因があるのではないかと申し上げました。
それでも、両眼で見ているときにはずいぶん見えやすいとのことで、ツアイスの遠近累進、グラダール1.74でレンズ交換をすることになりました。
土曜日にゴルフに行ってきたとのご報告をいただき、遠見も良く見えるようになったと喜んでくださいました。
前のレンズは10万円もする高価なレンズでしたが、フィッティングがまったくダメで台無しでした。
歪み計で見たレンズの歪みもひどい状態でしたが、これはメーカーの玉型加工しか受け付けていないレンズなので、大きめに仕上がってきたレンズを無理に締め付けているために生じたようです。
岡本
ひずみについては、前に私が報告したのと同じケースですね。東海光学は、枠を預かってレンズを入れるというのを始めたようですので、おそらく無理な歪みはない状態で枠入れをしてくれるものと思いますが、他のメーカ-も同じ方式のことをやらないと、ヒズミの問題はどうにもならないでしょう。
仮に、メガネ店の方で、ヒズミを最小限にするために手摺りで最終調整をしようという意思があり、手摺りの技術があっても、中等度以上のマイナスレンズの場合のように小ヤゲンになっていた場合には、手摺りではきれいに追い摺りをするのはまず無理です。
原
ヒズミについては、前のレンズには修正(追い摺り)を試みた痕跡はありませんで、カットされてきたレンズをそのまま入れたようでした。ヤゲンカーブとリムカーブもまったく合わせていないようでしたので、メガネ店の加工担当者は歪みもなにも気にしていないのではないでしょうか。
岡本
ということは、枠のデーターを送ったときに、枠のカーブのデータも送られていっており、レンズはそれも考慮に入れて摺りあがってくる……というわけではないのですね。
それにしても、メーカーから送られてくるレンズをそのまま入れるだけだったら、学生アルバイターでもできるでしょうネ。
ホントは玉型加工の方が難しい
原
HOYAの場合、枠のカーブのデータも送られているのだと思います。玉型加工のヤゲン位置は、オート加工、前後比率指定、フレームならい、と数種類指定できますが、私はこれまでオート加工(レンズの前後のカーブから割り出したヤゲンカーブ)しか発注したことがありませんので、他の指定の仕上がり具合はわかりません。
岡本
枠のカーブのデータもメーカーに送られているのであれば、その問題のメガネの場合、枠のカーブとレンズのカーブが合っていなかったのは、なぜだかわかりませんが、まずいですね。
原
【HOYAの玉型加工の場合、枠のカーブデータも送られていますので、「フレームならい」を選択すれば、そのように仕上がってくるのではないでしょうか。】a
ただし、その場合、近視がある程度の度数になると、枠入れしたときに、レンズが前にせり出すようになってしまって、不格好になりそうです。
いずれにしても、自店で丸生地から削るにしても、あるいは、玉型に近い形で玉型よりもやや大きめのレンズが来てそれを削るという方法にしても、とにかく自店で自動機械で加工できる方が良いですね。
岡本
【 】aということは、そのまずいメガネの場合には、フレームならいの指定にしなかっ
たので、リムカーブとは違うヤゲンカーブのレンズが送られてきて、枠入れをするときに、リムカーブの修正もレンズカーブの修正もしなかったので、結果としてレンズのヤゲンのカーブと枠のカーブの合っていないメガネになってしまっていた、ということなのでしょうネ。
原
そうだと思います。
やはりこの場合は、リムのカーブを浅めに修正してからフレームデータを送って、仕上がってきたレンズのヤゲンカーブにフレームカーブを再度仕上げの修正をして枠入れするべきだったと思います。
ただし、小ヤゲンがついているマイナスレンズは、ヤゲンの大きさを奇麗に修正できないのですし、その修正が大変な手間になりますので、丸生地で送ってもらって、自店で加工する方がかえって面倒がなくて良いですね。
ヒズミも何も考えずに、削られて送ってきたレンズをネジを入れるだけで枠に入れて、それで高いレンズが売れて……ということなら、商売としてはそれで良いのかもしれませんが。
岡本
玉型加工でレンズを注文する場合、レンズのベースカーブを推測して枠のリムカーブとうまく合わないかなと思えば、リムカーブを修正してから、トレーサにかければよいのでしょうが、実際のところそこまでする店は少ないのでしょう。
メガネ店の方も「メーカーでレンズをきっちり枠の形に削ってくれて、心取りも正確に入っている玉型加工」というようなイメージを持ってしまい、特別に自分は何もしなくても玉型に綺麗に加工されたレンズが送られてきたら、それを入れるだけでいいから楽だワ、みたいな感じで対応しがちなのかもしれません。
しかし、ホントは、玉型加工のときこそ、追い摺りが難しいので、レンズの歪みを最小限度にして枠入れを仕上げるということが難しくなるのです。そういう点においては、玉型加工は自店での加工よりも、ずっとやっかいな方法なのだという認識を、玉型加工のレンズをよく注文するメガネ店のかたには、しっかり持っておいてほしいものです。