岡 本
眼科処方箋(←別に親しいわけでもない眼科の)でメガネを受注するときに、はて、どうしたものか、と迷うことがときどきあるのですが、
たとえば、お客さんが「できたメガネは検査をするから眼科へ持ってきなさいと言っておられました」とおっしゃることがあります。
特に問題なさそうな内容の処方ならその通りに作ればよいので話は簡単なのですが、たとえば、下記のようなものならどうでしょうか。
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遠用
R=S+1.25
L=S+1.50 PD62
近用
R=S+3.75
L=S+4.00 PD60
「遠近両用ではなく遠く用と近く用を別々に」、と注釈がつけてあります。
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このPDが、「遠用も近用も、どちらも適切」、というのは、やや考えにくいです。
それで、この人のPDを店で測ってみると、遠見で64だった・・・・とします。
ここでみなさんにアンケートです。
質問1
この場合、あなたならどうしますか。
1( )処方箋のまま作る。
理由( )
2( )PD(OCD)を換えて作る。
→ 遠用のOCD( ) 近用のOCD( )
3( )自店での検眼をお勧めして、承諾を得たら、その検眼の結果の度数やOCDで作る。
質問2
上記の質問の答が2のかたにお尋ねします。
4( )PD(OCD)を変えた理由を書いたものを御客さんに渡して、これを眼科で見せてくださいと言う。
5( )特に何も言わずに、できたメガネを渡す。
6( )その他( )
質問3
上記質問の答が3のかたにおたずねします。
当店での処方度数は、乱視も入って、球面度数も変わりまして、それで作ることになりました。
7( )メガネお渡しのときに、事情を詳しく書いたものを御客さんに渡して、それを眼科で見せてくださいと言う。
8( )眼疾患などで眼科に今後も通うのであれば上記の7にするが、眼疾患はなく、以後その眼科に通うことはないというのであれば、「眼科へメガネ検査に行くと話がややこしくなるので行かないでください」と言う。
9( )その他( )
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*このアンケートは、2014年の8月に眼鏡技術倶楽部
http://www.msopt.jp/mtcb/top.html
で、メンバーのみなさんにメールで送ったものです。
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2日前にみなさんにお尋ねした眼科処方箋アンケートにどなたも、お答えがありません。
答えにくい設問のようです。
もとよりこれは、どれが正解、と決められるものではなく、それぞれの選択肢におけるメリットやデメリットがあるわけですが、
1を選んだかたは、ユーザーにとって最良の状態のメガネを提供すること、よりも、とにかく摩擦を避けること、を優先するかただ、といえるでしょう。
1なら、眼鏡士でなくとも、超安売り店の販売員でも受注できます。
2は、ちょっと中途半端な感じです。
自分はどこにでもいる「メガネ屋」・・・・ではなくて「眼鏡士」なのである、と自負しているかたであれば、3と7にしたいものです。
というか、それができないのであれば、私としては「認定眼鏡士」の資格を返上してほしいと思います。
なお、質問1への回答として、他に、「このPDはおかしいですので」と言って、その処方箋を発行した眼科へもう一度行ってもらう、
という方法もありますが、実際にはそれは現実的ではなく、そんなことをしたら、そのお客さんはおそらく別の眼鏡店へ行くだけのことになりそうですので、それも懸命な方法ではないし、もし仮にまた眼科へいらっしゃったとしても、眼科は「これで間違いない」というだけのことになるでしょうから、ユーザー本位の対処法とはいえないでしょう。
もしも、ある眼鏡士がわが国の眼科一般の眼鏡処方レベルを知っているかどうかは別にしても、この処方箋の度数とPDに疑問を感じないというのであれば、その眼鏡士の専門的な能力レベルが疑わしいわけですし、疑問を感じるけれど、波風を立てるのはやめとく、というのであれば、それは「士」ではありません。
納得できない処方箋を示されても発行医師に問い合わせもせずにそれに従う、というのであれば、公益法人である協会が「認定」した「眼鏡士」の値打ちがないと思います。
眼鏡士は眼科医の部下ではないことはもちろんですし、視能訓練士や眼科の看護師とはちがって医師からは、まったく独立した存在です。
眼科医と眼鏡士は、ときには、お互いに協力しますが、たいていは違う分野において、患者さんや眼鏡ユーザーの視生活の向上に資するべき、専門職どうしなのです。
「認定眼鏡士」の資格(称号)は、宣伝のためにあるのではなく、技術者としての見識と良心とプライドと責任感を持って仕事に当たる存在であるための、ひとつの十字架として背負うべきものなのではないでしょうか。
下記もご参照ください。
ユーザー本位の眼鏡処方を推進する会
http://www.ggm.jp/ugs/
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【参考資料】
下記の拙著書のP301に「眼科処方箋に記載の近用PDが遠用PDに比べてあまり狭くない理由」という記事が掲載されています。
「眼鏡処方の実際手法」
http://www.ggm.jp/labo/books.html