[ML談義] 眼鏡士の守秘義務とは

生活者の秘密を守る?

岡本
2002.2.3に(社)日本眼鏡技術者協会により発表された「認定眼鏡士制度のガイドラインの中に「認定眼鏡士の倫理綱領」があり、そのひとつに次の記述があります。

5.認定眼鏡士は生活者に関して知り得た情報や知識の秘密をまもり、生活者の利益のためにのみ、それらを使用する。

これだけの文章では抽象的過ぎてわかりにくいのですが、これは要するに、自分が担当したお客さんの目の状態やメガネのことについての情報を他人に漏らさない、ということだと思うのです。

では、次のようなことは、この倫理綱領から見て許容されるのでしょうか。
許容されると思うものには○を、許容されないと思うものには×をつけてください。

(A)自店の得意顧客であるAさんから電話で「Bさんに貴店に行ってもらうので
(行かせるので)よろしく」とのことで、少ししてBさんが来店され、検眼してメガ
ネを作った。

Bさんは強度乱視で上斜位だった。
そのあとでAさんから「Bさんは眼が疲れるといって困っていたけれど、眼が疲れる原因は何だったの」という電話が入った。

その場合、Bさんの承諾を得ることなくAさんに、Bさんが強度乱視で上斜位であることや、その簡単な説明をしたとして、それは眼鏡士の守秘義務からして許容されるでしょうか。

AさんとBさんが、次のような関係であったとして、許容されるかされないか、あなたの意見をお聞かせください。

(1)Bさんは女子中学生でAさんはその父親。
(2)Bさんは女子高生でAさんはその父親。
(3)Bさんは大学生(未成年)でAさんばその父親。
(4)Bさんは大学生(22歳)でAさんはその父親。
(5)Bさんは成年の社会人でAさんはその父親。
(6)Bさんは成年の社会人でAさんは、その上司。
(7)Bさんは成年の社会人でAさんはその同僚。
(8)Bさんは主婦でAさんはその夫。
(9)Bさんは成年の社会人で、Aさんはその奥さん。
(10)BさんはAさんの兄で、どちらも成人。

(B)同様にAさんが40代半ばのBさんを紹介し、Bさんはほぼ正視の老視で近用眼鏡を必要とする人でした。
めがねをお作りしてお渡ししたあとで、Aさんから「Bさんはメガネを作る前は書類を読むと眼が疲れるといって困っていたけれど、眼が疲れる原因は何だったの」という電話が入った。

あなたはAさんに、Bさんの承諾を得ることなく、Bさんが老視であったことを言いますか?

(1)AさんはBさんの夫だった。
(2)AさんはBさんの兄だった。
(3)AさんはBさんの同僚(上下関係なし)だった。
(4)BさんはAさんの秘書(部下)だった。
(5)AさんとBさんは同業他社の知り合いだった。

(C)事例として研究会などで発表し、それを研究会(学会)会員が見る雑誌に掲載する場合に、本人の名前を載せないのは当然ですが、

(1)年齢性別を書いて詳しいデータなどを載せる。
(2)年齢性別のほかに職業や家族関係や病歴や日常生活のことなども書いて詳しいデータを載せる。(ストレス関連でそれを書くことが参考になると思ったので)

(D)自分が書いているブログやHPに(自分の店の名前は明記している)お客さんの事例を載せる場合にお客さんの名前は伏せるのはもちろんですが、

(1)年齢性別を書いて詳しいデータなどを載せる。
(2)年齢性別のほかに職業や家族関係や病歴や日常生活のことなども書いて詳しいデータを載せる。(ストレス関連でそれを書くことが参考になると思ったので、ということにします)

適宜コメントも入れていただいてけっこうです。

個人を特定できなければOK

浜田
(A)は(6)と(7)が×であとは○。
(B)は(1)と(2)が○であとは×。
(C)はどちらも○で、(D)はどちらも×です。

ブログに載せる場合は、個人を特定できる恐れもあると思いますので、「詳しいデータ」は、載せないほうがいいと思います。
載せるのであれば、たとえば年齢なら「30歳代の男性……」とする。

井上
(A)と(B)は浜田さんと同じです。
(C)は(1)は○で(2)は△です。
(D)は(1)は○で(2)は×です。

私の場合、基本的には未成年者の場合、一人で来られた時にはどのようなメガネが必要で、金額はこれくらいだと親に連絡をします。

横田
(A)と(B)と(C)は浜田さんと同じです。
(C)は、その人物が特定できなければ、詳しく書いても良いと思います。
(D)はどちらも○で、(C)と同様に、その人物が特定できなければ、詳しく書いて
も良いと思います。

岡本
ブログやHPに事例を載せる場合、地域密着的な店の場合、年齢をぼかしても、職業などを書いただけでも、「あの人じゃないか」などと思われてしまうことがありえると思います。
ですので、できるだけ、そういう推察がしにくいような書き方にしないといけないでしょうね。

もっとも、本人がその全文を見た上でその文章でその店のHPに載せてくれていいということならかまわないと思いますが、本人の承諾なしに載せる場合には、かなり表現に気を使わないといけないと思います。

事例において検査データそのものは相当詳しく書いても個人の特定推察は難しいでしょうが、それよりも、家族関係だとか、仕事の内容だとか、生活スタイルだとかを、うまくぼかさないといけないでしょうね。

今後、眼鏡士がHPやブログに事例を載せることが増えることはあっても減ることはないでしょうから、協会としては、そういう記事における事例の書き方のガイドラインを示す必要があると思います。
そうでないと、単に「守秘密を守るべし」と言われただけでは具体的にどのようにしてよいのかが、まったくわかりません。

永光
(A)は浜田さんと同じです。(B)は、(1)(2)が○であとは△です。

「守秘義務でお話できません、ご本人にお尋ねください」では「なんだせっかく紹介してやったのに、そんな返事か」ということになります。誰でもいつかはそうなる老化現象であっても、本人は程度の差はあれショックはあると思いますので、
お話したことは内緒にしておいてください、とお願いして、老眼鏡の効用について
も説明しておきます。

(C)は両方とも○ですが、(D)は(1)が△で、(2)が×です。

ただし、他人に特定されることが無い場合なら(1)は○になっても良いと思います。

岡本
(D)の場合、たとえ、他人が見たら誰のことだかまったくわからない書き方であったとしても、(1)か(2)の場合、ご本人の承諾を得なくてもよいのかどうか、という問題もあるでしょう。

なぜなら、ご本人が読まれたらたいていは、自分のことだとわかるでしょうから、それで特にいやだと思わない人もいるでしょうけれど、感じ悪く思われる人もいるのではないでしょうか。

研究誌に掲載の場合はともかくとして、ネットで一般公開する場合には、こういう点で検討の余地が残ると思います。
最近、メガネ屋でブログを書いている人が増えてきていますので、この点については、協会も、認定眼鏡士がネットに事例を載せる場合のガイドラインを作成すべきだと私は言いたいです。

お客様に不利益がなければ

保田
(A)は浜田さんと同じですが、Bは(1)(2)(3)を○とし、あとは×です。
基本的に、自店と紹介者との信頼関係はあるものとして、AさんとBさんの関係がどうかということが大事なのだと考えます。
その情報を伝えることで、Bさんにとって何らかの不利益が想定される場合は、秘匿すべきだと思います。

(Cはどちらも○で(D)はどちらも×です。
研究会などの事例とブログでは、かなり性格が違うと思います。
まして、自店の名前が明記されていれば、その情報を特定しやすいでしょうから注意を払う必要があると思います。

若作りの女性の場合なら?

岡本
(B)の(3)で、Bさんが若づくりの女性でAさんが男性だったとしたら、それでも
○でしょうか?
私は(B)の場合、(4)でBさんが女性でAさんが男性なら、(4)の方が(3)よりも、事実をAさんに言ってしまう可能性が高いですね。

保田
あー、若づくりの女性ですか……それはそうですね、うかつなことはいえません。

岡本
ここでひとつ、どなたからもコメントされなかったことを申し上げますと、そのメガネを掛けるお客さんの紹介者または一緒に店に来た人が、そのメガネ代金を支払った(または、支払ったらしい)のであれば、その紹介者には事実を言う、というのも、ひとつの現実的な対処法かな、とも思います。

たとえば、高校生の子供のメガネで、親が代金を支払ったというような場合はもちろんですが、当店には常得意客である上司が店についてきて秘書の女性のメガネの代金を支払った、というのであれば、その上司からあとで秘書の眼の状態について尋ねられれば、「ご本人から聞いてください」などとつきはなすことは常得意客に対する失礼な行為になりかねません。

このことを、理屈でいえば、「その秘書の人の眼の検査やメガネの作製は、上司の金銭的負担によってなされたものであるから、その眼やメガネについての情報をその上司も共有する権利があるはず」となります。

逆に言うと、親の紹介で学生あるいは社会人(どちらも、成人とします)が店に来てメガネを買った場合でもそれをバイトや自分の仕事でかせいで得たお金で買ったのなら、親にはその子供の目やメガネの情報を得る権利はないのではないか、とも言えるかもしれません。

一般的に言えば、子供が成人になったら、親はもう扶養の義務がなくなりますが、それと同時に相手を一人前の大人として尊重しなければならなくなるわけです。
その場合、経済的な独立を子供がなしていれば、親は子供に対して干渉する余地がより以上に減りますし、たとえば、子供がその生活のすべてにわたって経済的に独立をしていなくとも、少なくとも、そのメガネについては親の援助をまったく受けずに買ったというのであれば、少なくともそのメガネに関することについては、親は口出しもすべきではないし、その中身を詮索する権利もない、と言えるかもしれません。

ただし、現実には、もし、そういう場合で親御さんからあとで電話で問いあわせがきた場合には、親の感情をまったく害せずに、お子さんの目やメガネの内容について説明するのを避けることはむずかしそうでので、うまくぼかしておかざるを得ないでしょう。

なお、今回のアンケートのいずれのケースにおいても「ご本人からお聞きください」という答えでは、解決しないことが多いと思います。
なぜなら、何らかの理由で本人に聞きにくいか、あるいは、聞いてもよくわからないのでわざわざ電話で尋ねてこられたのでしょうから。

今回の協会のガイドラインの「認定眼鏡士の倫理綱領」における守秘義務については、おそらく他の○○士(○○師)の倫理綱領を見て、「まあ、これもいれておこう」ということで、そのまま写して入れてみただけで、具体的な詳しい検討は何もなされていないのではないか……と私は推察します。

たとえば、その文章にある「(業務を通じて知り得たことを)生活者の利益のためにのみそれら使用する」ということを厳密に守るのであれば、研究誌であれ、ブログであれ、たとえ匿名でもその人の何らかのデータなどを公表して、それがその人の利益のためになることはないと考えられないわけですからで、公表は一切できないことになります。

また、顧客の住所氏名を利用してダイレクトメールを出すという行為は、人によっては迷惑に感じられるかもしれませんから、それも「生活者の利益のためにのみ利用」とは言えないかもしれません。
しかし、匿名によるデータの公表もだめ、とか、DMもダメなどというのは現実的ではありません。
なぜこういうことになったかというと、もう一度言いますが、この倫理綱領を作った人は、少なくともこの守秘義務の条項については、深い考えもなしに、単に他から引き写してここにはめ込んだだけ……だからなのでしょう。

投稿日:2020年10月16日 更新日:

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