岡本
悪徳弁護士という言葉がある。
たとえば、依頼者から預かったお金を着服して逮捕された、なんてのは悪徳弁護士の典型である。
では、こんな弁護士ならどうか。
依頼者から「このサイトは目障りだから何とかしてほしい」と頼まれて、その内容を見てみると、たしかに依頼者にとっては好ましいものではないようだが、書いてあることに違法性はなくそれどころか、一般ユーザーにとっては、大いに参考になることが書いてある・・・・と思った。
しかし、依頼者というのは「お客様」であり、依頼者、あるいは顧問先企業がいるからこそ、弁護士の生活は成り立つ。
だから、その依頼を受けて、そのサイトの主宰者に対してこのサイトは偽計業務妨害だ、という警告書を送りつけて全文削除を要求する、という弁護士なら、どうか。
悪徳、とまでは言わないが、少なくともほめられた弁護士であるとはいえないであろうし、もしもその弁護士が、そのサイトの内容が完全にシロと判断したにもかかわらず、それでも依頼者の側について、「10日以内に全文を削除しなければ刑事告訴する」などという脅迫的な警告書を相手に送りつけたというのであればその行為は、刑法上の脅迫罪に相当する可能性もあるのではないかと私自身は思うのである。
この場合、その弁護士が、当該サイトの内容が本当に偽計業務妨害に相当する、このサイトの内容は社会正義に反する、と判断して警告書を送ったのであれば、脅迫罪にはならないであろう。
しかしそれなら逆に、そのサイトの内容が、一般人が常識で判断して、あるいは、法律のプロが見てもシロ、ということなのであれば、私はその弁護士の法律の専門家としての能力に疑問符をつけざるをえない。
以前に私は、前に住んでいたマンションの理事をしていたときに、隣のビルとの境界線争いで、民事裁判の被告として法廷に立ったことがある。
そのとき、相手側の弁護士は、強圧的なもの言いで、おかしな、筋の通らない尋問を私に浴びせてきた。
あとでわかったことは、その弁護士は、いわばお得意さんである依頼者へのアピールを高める(被告を大いに懲らしめているという印象を持ってもらう)ために私に対してそういうふるまいをしたのであった。(民事裁判のほとんどは、被告と原告の感情のもつれが原因である)
公的資格を持つ専門職にとって最も大事なことは何であろうか。
専門的能力にすぐれていること・・・・?
いや、それは必要条件にすぎない。
私は、精神性が重要だと思う。
弁護士は「士」である。
すなわち、誇りと責任感を人一倍持つべき「武士」のはしくれであるはずだ。
「弁護屋」ではない。
私利私欲を離れて、自らの良心にそむくことの無い、職務遂行が望まれるのが、専門職、すなわち、真のプロフェッショナルなのだと私は思っている。
職業には3つの意義(目的)があるという。
1)社会(公益)への貢献
2)それを持って収入とし、自分や家族の生活を立てる。
3)それを通じて自己の人格(人間性+能力)を高めていく
すべての職業人は、このことを心得て日々の仕事をしていきたいものであるが、就中、「士」であれば、上記の3つのうちの1)を常に忘れずにいたいものである。
私の場合も、公的資格とはいえないが、大阪眼衛生協会という任意団体から「眼鏡士」
という称号をいただいたメガネ屋である。
だから常に「士の心」を忘れずに、毎日の仕事を続けていきたいと思っている。
たとえば、メガネを求めて来店されたかたの検眼をしてみて、この人はいますぐにメガネを作るよりも、先に眼科で眼を診てもらったほうがよいと思えば、そのときに健康保険証をお持ちであればすぐにもよりの眼科へご案内する。
(ただし、その眼科と当店がヘンな関係にあるのではない。その医師と私は互いに相手の職業人としての力量や倫理観を、評価し合っている間柄なのである)
しかし、検眼してみてヘンだなと思った人を眼科に案内する、くらいは、まあ普通のメガネ屋なら、日常的に実行していることであろう。
では、仮に、お客さんが高額のレンズを希望されたとしても、「いや、あなたの場合は、度数も弱度だし、用途に応じたレンズの性能の点からしても、一番安いレンズで十分です」と言って、安いレンズをお勧めする・・・・というのならどうか。
眼鏡「屋」でなく眼鏡「士」であれば、そういうアドバイスをするのが当然なのである。
私の知人で、薬剤師で、お客さんが持ってきた薬の処方箋を見て、疑問を感じたら必ずその発行者に疑義照会をし、というのを頻繁にやったところ、ほどなくしてその薬局の店主から解雇された、という人がいた。
そして、現実は、普通の薬局にいる薬剤師は、お客様の症状を聞いて、それなら薬よりも食餌と運動でこういうふうにした方がよいというアドバイスをする、なんてことはめったにないし、店にとって儲けが増える薬を薦めたり……だし、処方箋薬局にいる薬剤師は、処方箋を見てその薬を棚から取り出して単に薬の用法の説明をするだけである。
いつの時代も、万事カネの世の中・・・・なのであろうが、公的資格を持った専門職までが、その色に染まってしまうのは寂しい限りである。
専門職というのは、ほとんど例外なく、といってよいが、まじめにやればやるほど儲からないものである。
「メガネ屋」「眼鏡技術者」から、「公的資格を持った眼鏡士」になりたいと思っている
人は、その辺のことが分かっているのであろうか。
そこまではわかっていないか、あるいは、わかっているけれど、そんなことは関係なく眼鏡士、という称号を利用して、なんとか商売をもう少し有利にできればよい、なんていう考えの人も多いのではなかろうか。
そうであれば、いまこの業界がやっている国家資格獲得運動は、まことにあやういものだと、私は言いたいのである。
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こちらもご覧ください。
→ http://usukal.biz/loupe/1406071.html
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