2014.10.24 岡本隆博
眼鏡のフィッティング調整における、フロント部のそり角のつけかたにおいては、下記のような要素がある。
光学的要素
美的要素
力学的要素
その他の要素
これらを順に説明していくが、これらはそれぞれ独立したものではなく、他の要素との関連もあるし、その優先順位は個々の場合において違ってくる。
だから、そり角の設定のしかたは、ケースバイケースでかなりフレキシブルに考えるべきものなのである。
1)光学的要素
レンズ光軸と、そのメガネでの基本的な視線(水平方向における)との一致を目指すのは当然であるが、ここで、重要なのは、
【光軸のずれ、イコール、左右のフロントリムの180度からのずれ】ではないということである。
すなわち、光学中心の位置が、その玉型の水平方向での中央にあるのならば、上記の【 】内の等式は成立するのだが、光学中心の位置が中央からずれていれば、この等式は成立しない。
そして、その場合に、リムカーブが強ければ強いほど、この2者が「イコール」からずれる、その角度は大きくなる。
これまでのフィッティング論においてはそのことを無視したそり角論が意外に多く、上記の【 】についは、イコールであるとみなして、「近用眼鏡では170度くらいのそり角がよい」などと単純なことを書いている筆者もいる。
(自分では、そんなフィッティングをしていないくせに……)
また、眼鏡のフィッティングにおける横田流の家元、横田進氏は、月刊『THE EYES』における連載講座(2014.10)「横田流フィッティング術 第105回」において、極く単純に(詳しい説明はまったく無く)少し順そりしているフロント部を180度に直している。
*まあ、そもそも「○○流」というのは、踊りの花柳流と藤間流みたいなもので、どちらが正しいか正しくないかというものではなく、家元の知性よりも感性により創始されたものなわけである。
科学や学術には○○流と言うものはなく、○○流というのはそれは、いわば芸事の範疇に属するものだと言え、ゆえに、フィッティングの家元氏が「手さばき」を強調される理由もうなずけるというものだ。
閑話休題、
拙著書『よくわかる眼鏡講座・上』では、もちろんその二者が必ずしもイコールではないことについては言及しているが、定量的な検討はしていなかったので、
以下にその検討をしてみよう。
たとえば、58□18(FPD76)の枠の遠方専用メガネで、
(1)OCDが68で玉型の中央から4mm鼻側に寄ったところに光学中心があったとき
(2)OCDが60で玉型の中央から8mm鼻側に寄ったところに光学中心があったとき
で、
(A)リムカーブが8であった場合
(B)リムカーブが3であった場合
とを、検討してみる。
つまり、これらの4とおりの場合に、互いに平行な視線に対して左右レンズの光軸も平行になるようにするには、フロント部のそり角を何度にすればよいかということを計算してみる。
なお、ここでの数値が180よりも少ない場合は「逆そり」で、多い場合は「順そり」だと解釈していただきたい。
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以上は、2014の10月に、メガネのそり角について眼鏡技術倶楽部のMLに私が書き込んだメールの初めの部分です。
これ以後、そり角について、いろいろな話が続きます。
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